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歴史的アルメニア地域に 4世紀より建設されてきたアルメニア正 教教会堂建築 ( 以下、「アルメニア建築」とする ) は、地中海地域 からオリエント地域一帯における建築文化の史的展開を明らかにす る上で注目すべき建築群と捉えられる。筆者らによる一連の研究で は、石材の配列や部材間の関係など、建築を実現するための方法と しての構法に注目し、初期(4-7世紀創建)のアルメニア建築にお ける建築形態、特に立体的な構築物としての建築固有の特質を明ら かにすることを目的に、考察を進めてきた。 このうち、前々稿 では、教会堂主要部構成(図 1)における壁 面の構築方法について、これまで初期アルメニア建築に用いられる 工法として一様に捉えられてきたラブル・コア工法が、その構法的 側面において時代とともに変化していることを示した。この変化は、 木造小屋組からヴォールト及びドームを用いた架構へと移行する中 で、従来より用いられてきた壁面の水平を実現する切石積の方法が、 壁面を部分ごとに安定的に構築するための方法から、教会堂主要部 構成の壁面全体の水平を確保しながら構築するための方法へと応用 されていったものと捉えられた。また、前稿 では、初期アルメニ ア建築の教会堂主要部構成内部における上部架構について、面的な 架構であるバレル・ヴォールト、半ドーム、クロス・ヴォールト、 線的な架構であるアーチを基本要素として抽出した上で、その組み 合わせ方を検討した。その結果、アーチと半ドームの用法に年次的 変化が認められ、特にアーチの使用における新たな形式の導入とド ーム架構の導入に符合がみられた。この符合が構造的な安定化や合 理化と解釈されることから、垂直壁面の一体的な施工を通じた躯体 の安定化が窺えたように、教会堂主要部構成内部の上部架構におい ても、既知の架構要素の応用的な使用により、ドーム架構に対応し た教会堂主要部構成の整備が図られたものと捉えられた。 教会堂主要部構成内部の上部架構については、その全体を架構要 素の集合、すなわち架構構成として捉えることができ、前稿でみた 接合形式の視点を援用することで、架構構成を全体としてどのよう に構築していくか、また、どのような順序で構築していくのかを読 み解くことが可能である。さらに、この検討にみる遺構間の相違か ら、建築形態を生成する際の発想の違いを見出すことができるとと もに、既往の研究で一般になされてきた、平面形式による単純な類 型ではなく、建築物を如何に構築するかという視点から建築の形態 を読み替えることができる。特に、ドーム架構の導入期である初期 (4-7世紀)教会堂における建築形態の展開を捉えられるものと期待 される。この点について、既存の建築平面類型では、個々の類型の 特徴を説明するのに適してはいても、各類型の関係を考えるに当た って、必ずしも適切な類型とはなっていない不備を指摘できる 。 そこで本研究では、初期アルメニア建築の教会堂主要部構成にお * 東京工業大学大学院総合理工学研究科人間環境システム専攻 助教・博士(工学) Assistant Professor, Department of Built Environment, Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology, Dr. Eng. 初期アルメニア正教教会堂建築の教会堂主要部構成における上部架構構成の系譜 アルメニア共和国におけるキリスト教建築の研究 4-

nihon kenchiku gakkai keikakukei ronbunshu/nihon kenchiku gakkai keikaku-kei rombunshū

THE ARCHITECTURAL GENEALOGY CONCERNING THE COMPOSITION OF INTERNAL VAULTINGS, COVERED ON THE MAIN PART OF ARMENIAN CHURCHES FROM THE FOURTH TO THE SEVENTH CENTURIES