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1. はじめに 地震による建物被害の程度を表すひとつの尺度として「全壊率」 や「全半壊率」が用いられることが多い.それらは今後の防災にお ける貴重な記録としてだけではなく,被害推定式の重要なパラメー タとして被害想定等にも使われる.しかし一口に「全壊」,「半壊」 と言っても,その定義は調査によって異なっており,それらを使用 する際には注意が必要である. 1995 年 1 月に発生した兵庫県南部地震では,全壊約 11 万棟,半 壊約 14 万 7 千棟という多大な住家被害を受けた.被災地ではそれ ぞれ異なる目的でいくつかの建物被害調査 が実施されたが,方法 および判定基準はそれぞれ異なっており,判定結果に大きな影響を 与えていたと思われる.本研究ではその中から,自治体による減 免および義援金補助のための「家屋被害調査」と,日本都市計画学 会関西支部および日本建築学会近畿支部都市計画部会を中心として 構成された震災復興都市づくり特別委員会(以下「震特委員会」)に よる被災記録のための「被害実態緊急調査」を取り上げ,比較 分析を行った.前者は被災者救済のために政府の通達(内閣官房審 議室 1968「被害認定統一基準」)に基づき,国から義務づけられて いるもので大地震時には必ず実施されるが,家屋の資産的価値の損 失度を見積もることが主たる目的であるため,実際の建物の被害評 価という点では緩い基準となっている.一方後者は,阪神・淡路大 震災の全体像の把握と今後への学術的貢献を目的として実施された 調査である.主に建物が再使用可能かどうかという視点から建物被 害評価を行っており,建築工学・土木工学・都市計画に関わる専門 家とそれらの分野を専攻する学生等によって実施されているため, 都市防災という観点からすると大変貴重な資料である.被災地域の 地震動の面的分布推定には,翠川らのように墓石転倒調査から求 めることができるが,広域にわたって同一の基準で判定されている この建物被害調査を用いて求めることも可能である.しかし,こ のような調査が今後の大地震時に必ず行われるという保証はない. したがって各自治体によって今後も確実に実施されるであろう「家 屋被害調査(建築年・構造等を含む詳細データ)」から,兵庫県南部 地震時に震特委員会等が行ったような建物被害判定に変換する評価 式を構築しておくことは,今後フラジリティカーブの作成や防災的 な都市計画を進めるうえで大いに役立つと思われる. 本研究では上で述べた評価変換式の構築を目的として,芦屋市に おける特定地域の一棟一棟の建物を対象として,自治体と震特委員 会による建物被害調査の判定結果を比較し,さらに推定される地震 動との関係を分析している.

CONVERSION OF FRAGILITY CURVES FOR BUILDINGS IN ASHIYA CITY DUE TO THE 1995 HYOGOKEN-NANBU EARTHQUAKE