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水産庁の最新(平成 23 年 12 月 26 日時点)情報によ れば,東日本大震災及び大津波による水産関係被害総額 は 1 兆 2 千 6 百億円を越えることが報告されている。う ち,漁船被害は 28,612 隻(1,822 億円),漁港施設被害 は 319 港に及びその被害額は 8,230 億円に達する。 これらの数値は,漁船,漁港施設,養殖施設,養殖物, 共同利用施設に限ったものであり,漁港背後に形成され る生活環境,つまり漁村集落のインフラ及び個人資産被 害は含まれていないし,福島原発事故に由来する漁業・ 水産業の被害については,それが現在進行形であること もあり,全容がつかめないのが実情である。 あの日から,1 年が経とうとしているが,被災地の漁 業と漁村再生は,どのような歩みをたどり,どこを目指 そうとしているのであろうか。 東日本大震災の最も顕著な特徴のひとつは,大津波を 伴ったことから,その甚大な被害が沿岸域に集中したこ とにある。そして,被災地の地域経済が,漁業・水産業 に大きく依存し,生活文化面をも規定する裾野の広さを 有していたことから,沿岸域に集積していたその産業, 生活,文化的ストックが壊滅的被害を受け,定住と就業 双方の条件を喪失した。このことが,関東大震災や阪神 淡路大震災などの大都市直下型大震災とは大きく様相を 異にする点である。 つまり,地域定住を支える住と最も属地的で基幹的な 業の双方が壊滅したため,地域の継続すら危ぶまれる事 態を生みかねない点が深刻なのである。 筆者は,特に,古来,豊かな海と資源を背景に成立し てきた漁業権漁業を根拠として,家族経営と漁村型経営 の柔軟性に担保されてきた東北被災地の沿岸漁業と小規 模漁村の今と未来に大きな関心を持っている。なぜなら ば,震災復興の論理の中でも拠点的水産都市の復興・再 生は経済合理的に見て,地域経済波及を通じた地域復旧 への影響が目に見えて明らかなため,議論の余地なく動 きが理解しやすいからである。 反面,小規模漁港漁村については,さまざまな立場か ら多くの提言や議論が乱立し,混乱しているように見え てならない。本稿は,従って,小規模漁村の地域計画あ るいは地域社会成立論の立場から,いくつかの現場のく らしと生業の実態を例にひきながら,今後の被災地沿岸 漁業・小規模漁村再生の可能性と展望について考察する ことを目的とする。

The Future Perspective of the Rebirth of Fishery and Fishery Community in the Devastated Area