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Kuneらの症例対照研究により,アスピリン服用 者の大腸がん発生率が 40%減少していることが 1988年に報告されてから,大腸がんに対するアス ピリンの抑制効果に関する多くの研究がなされた. Flossmannらは,19の症例対照研究のメタ解析を 行い,アスピリンや NSAIDsを使用しなかった群と 比べて,使用したことのある群では大腸がん罹患に 関するオッズ比(OR)は 0.80[95%信頼区間(95% CI):0.73–0.87]であり,用量・服用期間依存的に有 意に低下することを示した. コホート研究についても多くの検討がなされてい るが,2008年に Chanらが行った医療関係の男性 約 5万人に対するコホート研究において,アスピ リンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)常用者は, 非常用者と比べて大腸がん罹患に関する相対危険度 (RR)は 0.79(95%CI: 0.70–0.90)と有意に低く,その 服用期間に依存していた. 最もエビデンスの高い研究方法は二重盲検法によ る無作為割付臨床試験であるが,健常者の大腸がん の発生をエンドポイントとすると臨床試験には膨大 な参加者数と長期間の介入が必要であるため,現実 的ではない.一般的に,大腸がん化学予防剤の想定 服用者は健常者よりも大腸がんのリスク保有者とな ると考えられるため,大腸がん予防介入試験では, 大腸がんの高危険度群である家族性大腸腺腫症 (FAP)や Lynch症候群,大腸腺腫や大腸がんの既往 者などが対象となり,多くの場合,大腸がんの前がん 病変である大腸腺腫の発生をエンドポイントとした 低用量アスピリンによる大腸発がん予防 宮本真吾,石川秀樹,若林敬二,酒井敏行,武藤倫弘

Chemopreventive effects of low-dose aspirin on colorectal carcinogenesis