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岩盤内構造物の設計・施工において,岩石の力学特性におよぼ す水分の影響を把握しておくことは重要である。岩石は,巨視的 には圧縮応力が加わっていても,き裂先端などでは引張応力が生 じていることが多い。また,地下空洞が大規模な場合や複雑な形 状の場合,内圧が加わるような場合には,周辺岩盤に引張応力が 生じる可能性がある。すなわち,変形・破壊機構を解明するうえ でも実務の面でも,圧縮応力下だけでなく引張応力下での水分の 影響についても知っておくことが重要である。 岩石の一軸圧縮強度が,気乾状態と湿潤状態とで変化すること は古くから知られている。例えば,頁岩 1 ) ,砂岩 2 ) ,凝灰岩 3 ) , 泥岩 4 ) などの堆積岩では水分のおよぼす影響が大きく,湿潤状 態では気乾状態の半分以下になる場合があると報告されている。 水分による強度低下の主因はき裂先端における応力腐食といわれ ている 5 ) 。また,花崗岩,安山岩,凝灰岩では,“気乾状態と湿 潤状態とで応力一ひずみ線図の形状はさほど変わらない。気乾状 態の線図が,湿潤状態の線図を内包する”との報告がある 3 ) 。 岩石の圧裂引張強度が,気乾状態よりも湿潤状態の方が小さく なることもよく知られている。例えば,砂岩では水分の増加とと もに圧裂引張強度が低下すると報告されている 6,7 ) 。また,安山 岩では湿潤状態での圧裂引張強度が気乾状態での 80 % 程度にな り,凝灰岩では 40 ~ 50 % になったと報告されている 8) 。しか しながら,試験が困難な一軸引張試験での水分の影響については 知見が少ない。Parate9 は石灰岩,Ojo and Brook10 は砂岩を用い た試験を行い,湿潤状態での一軸引張強度が気乾状態での半分以 下になったと報告している。Hawkes et al.11 は湿潤状態で砂岩, 石灰岩,花崗岩の一軸引張試験を行い,水分の影響により強度が 低下することを報告しているが,得られている応力-歪曲線は ピーク強度までである。湿潤状態での一軸引張試験に関しては, 一軸圧縮試験や圧裂引張試験に比べてデータの量が格段に少な く,もっとも基本的といえる完全応力-歪曲線が得られていない のが現状である。 Okubo and Fukui12 は新しい一軸引張試験方法を提案して気乾 状態での完全応力-歪曲線を得ることに成功した。しかしながら, 確実に試験片をプラテンに接着することが困難であったので湿潤 状態でのデータは公表されていない。本研究では,一軸引張応力 下での変形・破壊特性におよぼす水分の影響を調べるため,一軸 引張試験方法を改良した。その結果,湿潤状態での完全応力-歪 曲線を得ることに成功した。さらに,複数のき裂を含んだ試験片 モデルを仮定して,得られた試験結果の定性的な説明を試みた。

Uniaxial Tensile Strength and Irrecoverable Strain of Rock Under Air-Dried and Water-Saturated Conditions