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1 緒 言 近年,環境問題の解決のため,特に持続可能な社会を 実現するうえで,低炭素社会および循環型社会の構築が 重要な課題の一つとなっており,さまざまな分野で種々 の取り組みがなされている. 繊維強化プラスチック (Fiber Reinforced Plastics, FRP) は,比強度,比剛性が優れた材料として,運輸部 門等にも広く使用され,燃費向上に伴うCO2の削減によ り,低炭素社会構築に貢献している.一方,循環型社会 構築のためにはリサイクル材の活用も必要と考えられる が,その基礎的データは十分ではない.バージン材,あ るいはリサイクル材が運輸部門等で使用される際には, 動的荷重を受ける場合も多く,強度に及ぼすひずみ速度 の影響を明らかにすることは重要であると考えられる. FRPの引張試験におけるひずみ速度の影響についての 研究 1)~ 9)は数多くなされており,そこでは繊維の種類, 長繊維か短繊維かで破壊の形態が異なることが報告され ている.長繊維複合材料の平滑材の場合,ガラス繊維強 化複合材料 (GFRP) は低速ではぜい性破壊するが,高速 では延性破壊を起こす,ぜい性-延性遷移 1)を示す.ま た,さらにひずみ速度が速くなると再びぜい性破壊を起 こす,すなわち 2つの遷移領域,ぜい性-延性-ぜい性 遷移,3), 4)があるという報告もある. また,炭素繊維強化複合材料 (CFRP) は,ひずみ速度 によらずぜい性破壊を示すことが報告 1)されている. 一方,短繊維複合材料の平滑材の場合,GFRPは低速 で延性破壊する場合でも,高速でぜい性破壊を起こす, 延性-ぜい性遷移を示し,これはマトリックス材料の粘 弾性挙動および繊維-マトリックス界面に起因すると報 告 7)されている. 構造材料の破壊は,切欠きや円孔等の応力集中部から 発生する場合が多く,このため FRP切欠材の破壊に関す る研究 8)~ 11)も多い.また,平滑材では延性的に破損す る材料でも,切欠きをつけることによってぜい性的に破 断する場合もある. 著者らは,ぜい性的に破断する FRP切欠材に対して切 欠底付近の力学的状態の厳しさに基づく破壊基準が有効 であることを,静荷重試験,引張速度 0.5mm/min (8.33 × 10−3mm/s),で実証 12)~ 15)している.さらに,前報 16)で, ガラス繊維強化ポリプロピレン射出成形板 (GFPP) の切 欠平板を用いて,引張速度 103mm/s,23°Cの条件のもと 引張試験を行い,破断時における切欠底の最大弾性応力 σ max,cが,切欠半径 ρと破断までの時間 tに依存し,切 欠深さとは無関係であることを示した. FRP切欠材を用いたひずみ速度の影響に関する研究 8), 9) の多くは円孔を取り上げており,そこでは引張強度が孔の 切欠きをもつ GFPPおよびそのリサイクル材の 破壊強度に及ぼす引張速度の影響 山 本 俊 浩 森 山 翔 平 竹 田 英 俊 Effects of Tensile Speed on Fracture Strength of Notched Plates for GFPP and Recycled GFPP