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1 緒 言 コールドスプレー (CS) 法は 1980年代にロシアで開発 された比較的新しい成膜法であり,数十 μmの微粒子を 高圧ガスにより音速あるいは超音速まで加速し,基材に 衝突する際の塑性変形によって皮膜を形成する手法であ る.1)従来の溶射法と異なり,加速粒子の融点に比べ非常 に低い温度で皮膜施工を行うため,基材や皮膜の酸化が 少なく,緻密な厚膜を得ることが可能である.2), 3)著者ら はこの特長を利用しガスタービン動翼の補修を目的とし たCS法の応用を検討しており,ガスタービン動翼材とし て広く用いられている多結晶 Ni基超合金 Inconel 738LC (IN738LC) 板材上に,同材皮膜を CS法によって形成す ることを試みてきた.これまでに 2mm以上の厚膜形成に 成功しているが,バルク材と比較すると皮膜の機械的強 度が低いことが問題となっている.4)そのため,IN738LCの CS皮膜の強度向上を行う上で,熱処理を施すことが極 めて重要であると考えられる.しかし,熱処理による IN738LC材の CS皮膜強度向上のメカニズムや最適熱処 理条件に関する詳細はわかっていない.皮膜に施す熱処 理条件についても,IN738LCの Virgin材へ施す標準的 な熱処理条件をそのまま使用することが考えられるが, CS成膜前は粒径数十 μmの粉末(IN738LCの結晶粒径 は数百 μm)であり,さらに成膜時に強加工を受け,ナ ノ結晶化する場合もある CS皮膜に対しては適切ではな い可能性が考えられる.実際に,標準熱処理後の IN738LCの CS皮膜微細組織は,Bulk材のそれとは明 らかに異なることが確認されている.4)そのため熱処理条 件の最適化が極めて重要である. そこで本研究では,IN738LCの CS皮膜について,熱 処理による皮膜強度向上に寄与する微視組織変化に関し て詳細に評価し,最適な熱処理条件の検討による CS皮 膜のさらなる強度向上を目的とする. 2 実 験 方 法 2・1 供試材およびスプレー条件 本研究で使用した IN738LC粉末および基材の化学組 成,ならびに CS条件をそれぞれ Table 1,2に示す.な コールドスプレー施工した Ni基超合金 IN738LC材の スプレー後熱処理条件の最適化 小 川 和 洋 恩 地 智 史 Optimization of Post Spray Heat Treatments for Cold Sprayed Ni Base Superalloy IN738LC