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1 緒 言 高分子材料の破壊じん性試験に関する規格は ASTM D 5045として 1990年に初版が,1999年に最新版 1)が発行 されている.日本では,1990年の前後に高分子材料の破 壊じん性試験方法について検討されているが,2)~ 4)その後 に調べられた例はほとんどない. ASTM D 5045は金属の平面ひずみ破壊じん性試験の 規格である ASTM E 399をベースに制定されている. その基本的な考え方は同じであり試験法も類似している が,一番大きな差異は予き裂の導入方法である.ASTM E 399では疲労予き裂を設けるが,ASTM D 5045では機 械ノッチ先端に剃刀により予き裂を設けることになって いる.ASTM D 5045には,予き裂導入方法について詳 細な記述はなく,また,破壊じん性値に及ぼす予き裂導 入手法の影響を検討した例は少ない.2), 5) 本報告では,非晶性高分子の中で比較的延性に富んだ ポリカーボネート (PC) とぜい性材料であるポリメチル メタクリレート (PMMA) を対象に,疲労予き裂と剃刀 を滑らせて予き裂を設けるスライディング法による破壊 じん性値を求め,比較検討した. また,辻ら 4)および Cayard5)は高分子材料の破壊じん 性値に及ぼす試験片幅 Wの影響を調べ,引張試験で粘 弾性非線形やひずみ軟化を生じる PC材の場合,ASTM D 5045の判定条件を満足しても平面ひずみ破壊じん性 値 KIcは得られないとの問題提起をしている. 本報告では,Cayard5)の実験結果を対象に 3次元弾塑 性 FEM解析を行うとともに PC材を用いて試験片幅を 変えた破壊じん性試験を行い,破壊じん性値に及ぼす試 験片幅の影響についても検討した. 2 供試材および実験方法 予き裂導入手法の影響を調べるための供試材は市販の 板厚 10mmの PMMA板と 20mmの PC板であり,破壊 じん性試験に用いた試験片を Fig. 1に示す.ASTM D 5045の標準試験片はW = 2Bであるが,2≦W/B≦ 4ま で許容している.疲労き裂試験片は最大容量 10kNの電 気油圧サーボ式疲労試験機を用いて約 2mm長さの疲労き 裂を設けた.疲労き裂導入時のΔKは,PCの場合 0.8MPa m,PMMAの場合 0.4MPa m(ともに R = 0.1)である. 剃刀スリット試験片は市販の新しいカッターナイフを 用いてスライディング法で導入した.ASTM D5045で は,機械ノッチ先端半径の 2倍以上の長さを 1回の動作 で入れることになっている.繰り返して剃刀スリットを 樹脂の破壊じん性値に及ぼす予き裂導入法および試験片幅の影響 木 内 晃 陳 栄 清 水 洋 志 Effects of Precracking Methods and Specimen Width on Fracture Toughness of Plastics