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1 緒 言 実構造物においては,その形状や負荷様式の複雑さか ら,単純な 1軸応力状態とならない場合がある.このよ うな場合に,実構造物の疲労強度を精度良く評価するに は,対象構造物の応力状態(多軸性)を把握したうえで, そのことを考慮した疲労強度評価手法を適用する必要が あり,従来から様々な評価手法に関する研究が行われて いる.1), 2)本研究では,実働下,特に踏面ブレーキが作用 したときに 2軸応力状態となる鉄道車両用車輪(以下車 輪)の板部を対象に,その疲労強度を精度良く評価する 手法を開発することを目的として,FEM解析により応 力状態を把握するとともに,標準サイズの試験片を用い た単軸疲労試験,2軸疲労試験をそれぞれ実施した.そ して得られた結果を基に,従来から提案されているいく つかの手法 1)も含めて,2軸応力状態における疲労強度 評価手法を検討した. 2 車輪板部の応力状態 2・1 車輪に作用する負荷様式 Fig. 1に車輪と実働下で作用する負荷を模式的に示 す.車輪の中央部分は板部と呼ばれており,軽量化のた め十分な疲労強度を確保できる範囲で,できるだけ薄く なるように設計されている.車輪に作用する主要な負荷 は,図に示すようにレールからの反力(機械的負荷)と 踏面ブレーキ(熱的負荷)の 2種類である.曲線区間を 通過中にブレーキをかけると,これらの負荷が同時に作 用することから,板部の疲労強度を評価するためには, このときの応力状態を把握する必要がある. 2・2 FEM解析による車輪板部の応力評価 車輪にレールからの反力と踏面ブレーキが作用したと きの板部の応力状態を評価するため,弾性 FEM解析を 実施した.Fig. 2に解析モデルを示す.モデルは 3次元 ソリッド要素で作成し,節点数は 21984,要素数は 17760である.車輪は弾性体とし,解析では軸孔を完全 拘束した状態で,まず伝熱解析で求めた踏面ブレーキ時 の温度分布を車輪に与え,次にレールからの反力を節点 荷重で与えた.荷重は車輪の回転を模擬して 15°毎に 180°移動させた.なお,ブレーキ時に作用する接線力に ついては,板部の応力への影響が小さいことからここで は考慮しないこととした.解析は汎用ソフト ABAQUS Ver.6.3で行った.Fig. 3に解析で得られた車輪の回転 に伴う板部(Fig. 2の点 A)の応力(半径方向:σr,周 方向:σθ,板厚方向:σz,rθ面のせん断応力:τ rθ)の変 2軸応力下における疲労強度評価手法の検討 加 藤 孝 憲 山 本 三 幸 山 村 佳 成 Investigation of Fatigue Strength Evaluation Method in Biaxial Stress State