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1 ま え が き 構造物の地震に対する設計法は,地 震被害を教訓 とし て段階的に発達 してきた.建 築物では,十 勝沖地震や宮 城県沖地震等の教訓 も生かした新 しい耐震設計法,い わ ゆる “新耐震”を導入 した建築基準法 ・同施行令の大改 定が1981年 に施行 された.一 方,道 路橋では,1980年 に道路橋示方書耐震設計編が制定された.こ れらの基規 準改定以前に建設 された構造物(“ 既存不適格構造物” と呼ばれる)の 耐震補強の必要性が指摘 されていたが, 伸展 しなかったのが実状であった. 既存構造物の耐震補強には,鉄 筋 コンクリー トや鋼材 が一般的に使用され,耐 震壁や鉄骨ブレースの増設,柱 の鉄板巻 きによる補強などが行われている.こ れらの補 強工法の問題点 を解決する方法 として考案 したのが, CFRPに よる耐震補強工法である.こ の工法は,鉄 筋 と比較 して引張強度が高 く,軽 量で耐久性があるなどの 特徴を有する炭素繊維を活用したものである. 1995年 の阪神 ・淡路大震災では,多 くの構造物が被 害を受けた.特 に,倒 壊など深刻な被害を受けたのは, 既存不適格構造物であった.こ れらの構造物の地震に対 する安全性向上対策の社会的要請が,今 回の大震災を契 機 としてより高まった.そ して,炭 素繊維の既存構造物 の補修 ・補強への適用が注目され,こ の分野での施工実 績が飛躍的に増大 している. 土木建築分野では,鉄 とコンクリー トが構造材料 とし て使用 されてお り,CFRPは 特殊な新 しい構造材料で ある.CFRPと これを用いた構造物はJISやJASS化 されていないため,建 築基準法第38条 の特殊 な材料あ るいは構法に該当 し,基 準法上は建設大臣の認定が必要 となる.そ のため,官 界 ・学会 ・民間の各分野でいろい うな研究開発が実施された1). CFRPに よる耐震補強工法の技術的な検討課題 とし ては,炭 素繊維 とCFRPの 規格や品質管理,構 造性能 の把握や設計法の確立,防 ・耐火性能や耐久性の確保, 施工法 とその管理法などである.こ れらの課題について は,数 多 くの補強効果確認実験や各種の試験 を行 って検 討 されてお り,施 工例 も多数報告 されている2).また, CFRPに よる既存の建築の柱 と煙突の耐震補強につい ては,(財)日本建築防災協会から技術評価 を取得 してい るものもある3). ここでは,CFRPに よる既存構造物の耐震補強工法 の概要 を紹介 し,CFRPの 材料諸特性の評価法とその 品質管理について述べる. 2 CFRP耐 震補強工法の概要 既存構造物の耐震補強で一般的に用いられている炭素 繊維は,直 径が7~14μmの 連続繊維で高強度 ・高弾性 のもので,ピ ッチ系 とPAN系 の両方がある.炭 素繊維 の引張力 と伸び(ひ ずみ)と の関係 を,ア ラミド繊維, ガラス繊維,お よび鉄筋と比較 したものを図1に 示す. CFRPの 力学的な特徴は,強 度が鉄筋 と比較 して非常 に高 く,弾 性係数が他の繊維よりも高 く鉄筋 とほぼ同じ であるが,鉄 筋に見 られるような降伏現象はなく伸びが 小さいことである.一 方,機 能的な特徴は,鉄 筋 と比較 して軽量で,錆 びないので耐久性に優れており,炭 素繊 維の状態では柔軟性 もあることである.な お,炭 素繊維 の弾性係数はアラミド繊維と比較して大きく,巻 き付け た炭素繊維がコンクリー トを拘束する効果がアラミド繊 維よりも高い.そ のため,既 存構造物の耐震補強に使用 される繊維は,ほ とんど炭素繊維であったが,ア ラミド 繊維 も最近になってごく僅か使用され始めている. 炭素繊維 は,エ ポキシ樹脂 を含浸 し硬化 させ た, CFRPの 状態で強度を発揮する.施 工時には,樹 脂が 未硬化の炭素繊維の場合 とCFRPの 場合の2種 類があ る.後 者は最近開発されたもので例が少な く,柔 軟性の ある炭素繊維の状態で施工で きる前者がほとんである. 前者の炭素繊維の製品形態は,図2に 示す ように,(1)

A Seismic Retrofitting Method Using CFRP for Existing Reinforced Concrete Structures.