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有限要素法(Finite Element Method, FEM)をはじめとする 数値解析は,計算機パフォーマンスの向上および低価格化 と,ソフトウェアの高機能化および多様化とが相まって,近 年ますます身近になっている。塑性加工分野において,これ らが利用される目的は様々であり,例えば成形後の被加工材 形状予測や加工荷重予測,製品および金型内部の応力やひず み分布解析,温度分布解析,破壊および組織発展予測など 種々の応用に供されている。塑性加工の変形解析は構造解析 に属し,その骨子は対象物に力が加わった状態で,構造上, 変形や力の分布がどのように変化するかを定量的に分析する ものである。 通常,塑性加工においては素材中の内力分布は極めて複雑 である。また内部にとどまらず,工具との接触界面において は一般的に摩擦力が生じ,これも界面において複雑に分布す る。材料内部および表面に分布するこれらの力が相互に作用 し合った結果として工具反力すなわち加工荷重が生じている わけであって,これらを正確に計算することは必ずしも容易 ではない。また一般に材料の各物質点の運動も一様ではなく 複雑に分布するため,変形が大きい箇所とそうでない箇所が 存在する。これらを定量的に計算することが塑性加工におけ る変形解析の本質である。 現象を高精度に予測するためには,以下の2つの課題を克 服する必要がある。 1解析理論およびモデリング技術の高度化 2入力すべき材料特性値および境界条件同定の高精度化 1については材料学的観点あるいは数値解析学的観点から 多くの研究が行われている。例えば降伏関数や多結晶塑性論 あるいはマルチスケール解析手法の高度化など,材料の変形 挙動をリアルに再現するための努力がなされている。 一方,2については,加工硬化や軟化挙動を反映した流動 応力ならびに塑性異方性などの,またこれらに温度が影響す る場合は加工発熱および熱伝導に関わる材料特性値(material property)が数値計算において必要になる。また材料の自由 表面や金型との接触界面においては材料と大気,あるいは材 料と金型との間で熱伝達が生じ,また後者においては摩擦力 が分布する。このため,熱伝達係数および摩擦係数などの境 界条件(boundary condition)が必要となる。ここで言う材料 特性値および境界条件とは,物理現象を理論的あるいは経験 的知見によって数学的に記述したいわゆる数理モデルにおい て,これに含まれる材料あるいは系に依存する数値であり, これらをいかにして同定するかが解析の成否を左右すると いっても過言ではない。 本稿ではFEMに必要不可欠な材料特性値のひとつである 流動応力(flow stress)に着目し,その同定に用いられる材 料試験について,JISに基づいた方法として引張試験につい て,また大ひずみ領域までの流動応力同定法としての圧縮試 験について紹介する。また流動応力同定に関する最近の研究 事例について概観する。

Materials tests for deformation analysis of metal forming—Flow stress evaluation—