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航空機などに使用されている 7075や 7050などの析出硬化 型の高強度 Al–Zn–Mg–Cu系合金では,古くから知られる問 題の一つとして応力腐食割れ(Stress corrosion cracking; SCC) があり,その解明と防止のためにこれまでにも多くの関係論 文 1) が報告されている。食塩水などを用いた一般の SCC 試験においては腐食反応が重要な役割を果たしている場合が 多いが,反応の結果生じる水素が脆化現象を引き起こす場合 もあることが報告されている 1) 。本系合金でも引張試験時 の初期ひずみ速度を著しく小さくした,低ひずみ速度引張試 験に供した場合には,腐食環境としてはマイルドな大気環境 でも延性が低下する大気環境脆化を示すことが知られている。 この場合の大気環境脆化は大気環境中の水蒸気がアルミニウ ムの新生表面で分解されることによって生じた原子状の水素 が材料中に侵入して,脆化を惹起するものであると考えられ ている 。 上述の SCCなどに関連して,実用合金では Crや Zrなどの 遷移元素の添加による結晶粒微細化や,強度を最高強度より 若干低下させた過時効処理を施すことにより耐 SCC性の改善 が図られてきている。大気環境脆化については,Zrが添加さ れた 7050合金において環境脆化に及ぼす熱処理や Cu量の影 響などが最近調べられているが ,脆化に及ぼす遷移元素の 種類の影響について検討した例は見られないようである。環 境脆化の一種である鋼の遅れ破壊の場合には,Vや Tiなど 水素との親和力の大きい元素を添加して生じる水素トラップ 現象を利用しての水素脆化防止が検討されてきているが , 高力アルミニウム合金ではそのような研究は報告されていな い。 Zrは Crに比べて水素との親和力が大きい ことから,こ れらの元素を含む合金の間では大気環境脆化の挙動が異なる 可能性が考えられる。よって本論文では 7000系高力合金に おいて代表的な結晶粒微細化元素である Crおよび Zrの添加 が大気環境脆化に及ぼす影響について検討することにした。

Environmental embrittlement in air of Al-Zn-Mg-Cu alloys with Cr or Zr