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現在,アルミニウム合金の溶体化処理には連続炉として適 した大気炉を用いるのが主流である。大気炉では炉内温度の 分布や変動が炉体のサイズ等に依存する。このため,共晶融 解を招かないよう,共晶温度よりも 15 20 K低い温度で溶体 化処理を施すのが普通である。 一方で,1990年代から鉄鋼材料等の高温熱処理に流動層炉 が普及しつつある。流動層炉は,炉内に粉粒体(シリカ, アルミナ等)を充填し,底部の多数の細孔から空気を吹上げ ることで,細粒を撹拌流動状態とする。これにより,塩浴炉 と同等の急速昇温および炉内温度の均一制御が可能となる。 これまでに著者らは,アルミニウム合金鋳物の熱処理に流 動層炉を適用し,従来よりも 10 K程度高い三元共晶温度直 下で溶体化処理を行うことで,機械的性質が改善できること を報告した。流動層炉を溶体化処理に用いることで,従 来の約 1/5の溶体化処理時間で十分な析出硬化および共晶 Si 粒子の球状化が達成でき,引張強さが 10%程度改善された。 流動層炉は,熱処理型合金の機械的性質を合金元素の添加等 なしに改善でき,さらに製造工程の省力化も図ることができ る優れた熱処理炉と位置付けられる。 ところで,共晶融解が生じる温度域での高温溶体化処理 が,中村 や古閑らによって報告されている。中村らは, 意図的に共晶融解を起こすための加熱処理と,共晶融解によ り生じた銅やマグネシウムなどの帯状組織を基地中に固溶す るための溶体化処理とを合せて施すと効果があるとしている。 そして,この手法により共晶融解部にある Fe系金属間化合 物および共晶 Si粒子が球状化し,破壊靱性を改善できると報 告している。ただし,場合によっては材料内部に空隙が残存 する点は問題である。古閑らは,共晶温度直上まで AC4CH 合金を加熱し,その温度に到達した時点で溶体化処理を打切 る熱処理を行った。この手法により強度が 10%程度改善で きるものの,溶体化熱処理炉のサイズや能力,特性によって 結果は大きく影響されると予測される。 研究論文

Improvement of mechanical properties by high temperature solution treatment in an AC4CH aluminum cast alloy