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五十年以上 も前のこと,ド イツのアル ミニューム加工に関す る本を読んでいた とき,百 年も経た時点 でワシン トン記念碑のアル ミ製ピラミッド尖頭部がほとんど腐食していないこと,ロ ンドン市ピカデ リ ー広場のエロス立像が変色以外に腐食のないこと,ロ ーマのサン ・ギオアチノ寺院のアル ミ屋根板が無 事であることなどがわか り,ア ル ミは長持ちするもんだナーと驚いたものである。 筆者 も1964年 に 自宅の屋根を0.6ミ リのアル ミ板に張 り替えたが,今 までに雨漏 りなど一度も起きた ことはない。文献によると均一腐食以外の孔食で最も深いものが四十年間に0.4ミ リ程度らしいが,そ れが本当ならあと半世紀は無事だろう。住んでいる世田谷が張 り替え当時は禁猟区でなかったから,鳥 打ちの空気銃で屋根に孔をあけられる心配があったようだ。そんなときに半田修理ができないからアル ミは駄 目だと屋根屋はくさしていた。本当はアル ミ屋根板工事が未経験だったのだろう。 僕の書斎の飾 り棚に高さ五十センチぐらいの乃木将軍の胸像がある。12%け い素のシル ミン鋳物で, ブロンズ色に着色 してある。六十年以上前に父の鋳物工場で試作されたものである。戦中戦後を通 じ, 戸外に放置 された り物置に放 りこまれた りしたが腐食や退色もなく,あ まりにも完全なので今では大切 に保管されるようになった。 父(1878~1966)が アル ミ鋳物の事業に明け暮れていたのは1922か ら33年までの約十年で,僕 が大学 二年のときまでである。その後は不況で仕事をやめた。われわれ家族は工場敷地内に住んでいたので当 時の商取引きや製造技法の断片を垣間見ることができた。そんなわけで誤 りもあるかもしれないが,ア ル ミ鋳物の着色由来めいたことでも書いてみようと思う。 大正から昭和に変わるころ,東 大理化学研究所(文 京区上富士前にあった)で は瀬藤象二(1891~ 1977)斥 による蓚酸法のアルミ陽極酸化処理(ア ルマイ ト)の 発明があ り,二,三 年後には宮田聡氏 (1900~1984)は その封孔処理法を開発 した。父はそのころ自社製品にアルマイ トを施すために理研に 通っていたが,ア ルマイ トを行った製品には着色が容易であることに興味を持った。父はそれより数年 前から染料によるアル ミ着色法を試行錯誤 していたからである。 しか しアルマイ ト後の着色の場合でも 水で洗 うと染料が流出(退 色)す る点は同じであった。 ある日のこと,ア ルマイ ト後に着色した板のテス トピースが偶然に研究室の机の上に置かれ,た また ま脇にあったヤカンの湯気が板に吹き付けられていた。そのとき蒸気のかかった部分だけが水洗い して も染料が流失 しないことに父は気が付いた。

A talk about the colored Al-castings