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本特集号は,平 成11年3月 に発足 した,日 本鉄鋼協会社 会鉄鋼部会傘下の 「製鋼 スラグを栄養源 として利用した海 洋植物プランク トン増殖によるCO2固 定化研究会」の研究 成果を纏めたものである。 本研究会発足の動機は以下のようである。大部分の種類 が単細胞とみなせる海洋植物 プランク トンは,太 陽光 と CO2を 利用する光合成で,1日 で1,2回 細胞分裂を起 こし, 増殖速度は極めて早い。その時プランク トンが体内に取込 む栄養素 は元素比 で,Fe:P:si:N:c:o=o.oo1:1:15:16: 106:212で ある。すなわち,鉄 を海水中に1モ ル供給する と,も しこれをすべてプランク トン増殖に利用できたとす ると,そ の体内にCO2を106,000モ ル吸収できることにな る。しかし実際の海域では,海 域により,増 殖のために必 要な,ミ クロ栄養塩である鉄や,マ クロ栄養塩であるりん 酸 珪酸,ア ンモニア,硝 酸などのイオ ン濃度が極端に不 足していて,そ れ らの貧栄養素の供給が律速 となり,増 殖 するのが困難となっている。製鋼スラグは酸化鉄,り ん酸, 珪酸などから構成 されているイオ ン性結晶なので,こ れら の構成成分を海水に溶出できれば,大 気中のCO2低 減が 効果的に行われることになる。従って,製 鋼スラグの有効 利用を海洋プランク トンの増殖用栄養源として利用 し,大 気中のCO2を 大量に固定化 し,地 球環境保護対策用のため に組込む提案をしようとした。 本研究会は日本鉄鋼協会に所属する鉄鋼各社からの委員 で構成されたのはもちろんであるが,と て も学際的なテー マを取扱っているために,多 くの海洋学者のご指導を仰い だ。そこで,本 来 日本鉄鋼協会の会員ではなかったこれら の人達にご無理を願って,本 会員になって頂 き,研 究会へ ご参加願い,共 同研究 を推進 してきた。この度,本 研究会 の活動を平成15年2月 に終了するにあた り,本 協会論文編 集委員会の許可を頂 き,上 記研究会の最終報告書発行に先 立ち,成 果を本特集 号として発刊することになった次第で ある。 この4年 間の本研究会で得 られた成果を要約すると次の ようになる。鉄鋼スラグの冷却速度の違いによる結晶の状 態分析,海 水へのスラグ成分溶出特性 と結晶相 との関係を 明らかとした。また,45ト ンの大型水槽へ汲み上げた湾内 海水中に溶存する窒素 と,製 鋼スラグ起源の海水への溶出 りん,珪 素,鉄 などのプランク トン増殖への効果調査実験 をおこない,ビ ーカーテス トで確認 した,鉄 鋼スラグ起源 の栄養塩 を利用 した海洋植物プランク トンの増殖効果を大 型水槽でも明確に実証 した。更に,海 洋植物 プランク トン の中で も珪藻類プランク トンの増殖が優先的に起 こること が判明 し,そ の効果として赤潮対策等にも有効である可能 性が考えられてきている。更に鉄鋼 スラグを原料 として製 造 したテ トラポッ トや小型漁礁の海洋への設置試験で も, 海草やこれ を餌 とする貝類等の動物増殖効果が確認 され た。研究会で行った,一 週間に亘る2回 の大型水槽でのス ラグの溶出実験では,環 境有害物質の溶出量は環境基準以 下であることを既に確認 しているが,今 後,ス ラグ中の環 境規制元素の海水への溶出挙動の把握を更に詳 しく調査 し,よ り長期に亘る実験において,ス ラグに含有 され る成 分が海水中に溶出したときの,生 態系に及ぼす影響を調査 す る必要がある。 これか ら,こ の種の実験を国内で行 う場 合は漁業権に関連する問題を,国 外で行う場合は対象国の 許可,協 力 を得 るための法案 を十分に考慮する必要 があ る。 研究会委員一同,本 来ならば,オ リジナル論文を英語で 書いて世界に向けて発表 し,そ の成果 を世に問いたいとこ ろであったが,研 究会の主査 として無理 をお願い し,日 本 語で書いて頂 き,研 究会での成果を本協会会員全員と共有 したいと願った次第である。会員の皆様か らの,読 後の率 直な評価とご批判を頂 くことを切にお願いしたい。 最後に,委 員として本研究会へ参加 して頂き,本 会委員 の研究 に多くのご教示 とご指導 をして下 さいました,東 京 大学海洋研究所野崎義行教授が平成15年1月 急逝 されまし た。この紙面 をお借 りして御礼 とご冥福 をお祈 り申し上げ たい。

Enhancement of Photosynthetic CO<SUB>2</SUB> Fixation by Marine Phytoplankton with Steelmaking Slag as a Nutrient Source