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近年,高 強度鋼が繰返 し数N=107で 疲労限度 を示 さず, N>107で も疲労破壊 を起 こし,S-N線 図が2段 に折れ曲が るなどの現象が注 目されている1-17)。N=109は 新幹線車軸 の約10年 使用に相 当 し,タ ービ ン翼等で は振動 による N>107の 繰返 しは珍 しくないので,高 強度鋼の超長寿命疲 労破壊の原因を究明することは長期間使用す る機器の安全 を確保する上で極めて重要である。この問題は最近世界的 にも注 目されてきてお り,1998年6月 にはこの問題を集 中 的に討議するための会議 「Symposium on Gigacycle Fatigue 」 がパ リで開催 された18)。109回程度までの繰返 し実験 には 通常の疲労試験機ではあまりにも長期間を要する。そのた め,パ リの会議では1kHzお よび10~20kHzの 高速の疲労 試験機 とそれによる実験結果が紹介 された19-21)。10kHz以 上の試験機を使用すれば短時間で109回 までの試験が可能 であるが,試 験片が熱を発生 し温度上昇があるので冷却 し ながら実験 する必要が生 じる。その ようにして得 られた データの妥当性について も議論がなされている。 高強度鋼の疲労強度は,材 料に含 まれる微小欠陥や介在 物に敏感である。静的強度は遅れ破壊の問題に代表 される ように水素等の環境因子にも敏感であることがよく知 られ ている。著者 らは先の研究9-14)によって,低 応力で超長寿 命疲労破壊 した高強度鋼の破断起点 となった介在物の周囲 には,表 面状態が粗いため金属顕微鏡で黒 く見える領域 (Optically Dark Area, ODA)が 存在 し,そ の形成には水素が 重要な役割 を果たしてい ることを指摘 した。ODAの 寸法 を介在物の寸法に対 して比をとるとその値 は,破 断寿命 Nf が長いほど大 きいことが明らかになっている。 本研究では,先 の研究9-14)と同様,SCM 435浸 炭窒化 ・ 焼入れ焼 もどし材を用いて,繰 返 し数N=5×108ま で引張 圧縮疲労試験 を行い,破 断起点 となった介在物近傍に注目 してODAの 形成 と材料に含まれる水素量との関わ りにつ いて考察を行った。特に,熱 処理条件を変 えて水素含有量 の異なる試験片を準備 して疲労試験 を行い,超 長寿命疲労 破壊に及ぼす水素の影響 を明確にした。一方,実 験結果を 欠陥寸法 と疲労限度 を関係づ ける√areaパ ラメータモデ ル22-25)によって定量的に評価 し,超 長寿命疲労破壊には介 在物に トラップされた水素が決定的に重要な影響を与 える ことを指摘する。

Acceleration of Superlong Fatigue Failure by Hydrogen Trapped by Inclusions and Elimination of Conventional Fatigue Limit