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多合金白鋳鉄はCr,V,Moなど強い炭化物形成能を有す る元素を多量に含有しており,凝固時に高硬度な特殊炭化 物が晶出するとともにその後の焼入れ・焼戻しにより基地 が二次硬化するため,優れた耐摩耗性を示す。そのため, 近年では高クロム鋳鉄に替わって鉄鋼熱間圧延用ロール材 として利用されている。熱間圧延用ロール材には耐摩耗性 だけでなく,耐き裂性,耐肌荒れ性等の性質が要求される が,これらの特性は凝固組織,すなわち,基地および炭化 物の種類,量,分布状態に深く関係している。 これまで著 者らは,本合金系材料の凝固組織形成について基礎的な研 究を行っており,凝固過程 1,2),状態図 3),熱処理特性 4-6)お よび機械的特性 7-9)について明らかにしてきた。 本鋳鉄は複数の合金元素を多量に含有するため,凝固時 に合金元素のミクロ偏析が生じ,凝固過程が複雑となる。 凝固時における合金元素のミクロ偏析過程によっては,耐 摩耗性を担う炭化物の晶出挙動や分布が異なると考えら れるので,ミクロ偏析の制御は本合金系の凝固組織を制御 する上で非常に重要である。ミクロ偏析を制御するために は,凝固時における合金元素の再分配挙動を十分に把握す る必要がある。特に ,溶湯の冷却速度が変化した場合は合 金元素の再分配挙動も変化し,それに伴って晶出相の種類 や量などが変化すると考えられる。そこで本研究では,凝 固時の冷却速度を変化させた場合の晶出相の種類,量,分 布状態について調査するとともに合金元素のミクロ偏析に ついて解析を行い,炭化物晶出挙動に及ぼす冷却速度の影 響を調査した。

Influence of Cooling Rate on Solidification Structures and Microsegregation of Multi-component White Cast Iron