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SUS304をはじめとするオーステナイト系ステンレス鋼 は,その優れた耐食性,加工性,溶接性から幅広い用途に 普及している。しかし,オーステナイト系ステンレス鋼は 成分に耐食性向上元素であるNiを多量に含んでおり,Ni 原料価格の影響を受けて価格が変動しやすいという問題が ある。近年でも 2006年から 2008年にかけて SUS304の価 格が高騰するという事態が起こった。また,耐食性向上元 素として,多くのステンレス鋼に添加されているMoも, Niと同様に原料の価格変動が大きい。そのため,NiやMo を含まない価格の安定した高耐食性ステンレス鋼の登場が 望まれている。 フェライト系ステンレス鋼はNiを含まず,さらにMoを 含まない鋼種もあるが,例えば,代表的なフェライト系ス テンレス鋼であるSUS430では,最も普及しているオース テナイト系ステンレス鋼のSUS304ほどの高耐食性を有し ておらず代替鋼とはなりえない。したがって,Ni, Moを使 用せずに何らかの形で耐食性の向上が必要である。そこで, 本研究では従来からステンレス鋼の耐食性向上元素として 知られ,比較的安価なCuに着目し,フェライト系ステン レス鋼における耐食性,特に大気環境中における耐発銹性 への影響について検討した。 Cuの腐食抑制機構についてはすでに多くの研究がな されている 。硫酸中における活性溶解では,溶解した Cuが鋼表面に金属Cuとして付着しアノード反応を抑制す る 。この活性溶解で鋼表面に付着したCuは,活性態域 を経過して不動態化させた不動態皮膜中では存在が確認さ れなかったことから,電位の上昇により再溶解するとされ ている 。 一方,不動態域においては,Cuの添加は不動態維持電 流を増加させることから,不動態皮膜の安定性を低下させ るとされている 。しかしながら,17%Cr–1%Mo–1%Si 鋼では2%のCu添加により不動態皮膜が破壊されるまでに かかる時間が減少したのに対し,17%Cr–3%Mo鋼では,不 動態皮膜が破壊に至るまでの時間が増加したという報告 5) もあり,Cuの効果には他の添加元素の影響があることが 示唆される。

A Mechanism of Improvement in the Corrosion Resistance of Ferritic Stainless Steels by Cu Addition