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二相鋼(Dual Phase Steel: DP鋼)は単相材に比べ,強度– 延性バランスに優れており,さらに焼付硬化性も高いこと から,自動車ボディ用鋼板に多く用いられている。DP鋼 の力学的性質における大きな特徴は,変形初期の加工硬化 率が大きいことにより低降伏比を示すことであり,このた め,DP鋼は延性に富み加工性に優れている。このような DP鋼の力学特性の発現機構の解明には,軟相であるフェ ライト相と硬相であるマルテンサイト相あるいはベイナイ ト相のそれぞれが,加工中にどのように変形を担うか明ら かにするとともに,それら強度の異なる相同士が変形中に どのように相互に影響を及ぼし合うのか詳らかにする必要 がある。DP鋼の力学特性と初期組織との関連については これまで多くの研究が行われており,力学特性に影響を与 える因子としては,( 1 )硬相と軟相の体積比,( 2 )硬相と 軟相の強度比,( 3 )軟相中における硬相の分布状態と形状, 等がこれまで考慮されている 。 ところで,塑性変形の進行に伴って結晶粒内部に蓄積さ れる転位の配列は一般に不均質であり ,このことが力 学特性にも大きく影響を及ぼす 。DP鋼では,同じ相間 の結晶粒界に加え異相界面も存在することで,各相内部で さらに変形の不均質性が増大するものと思われる。すなわ ち,硬質相に隣接した軟質結晶粒内部において新たな方位 差境界の形成が促進されるはずである。しかし,DP鋼に おいて実質的に変形を担う軟質のフェライト相中で内部加 工組織がどのように発達していくのか,また,その組織の 発達状態が力学特性にどのように影響するかといった実験 的研究は,未だ不十分な状況にある。 本研究では,熱処理条件の異なる二種類のフェライト– マルテンサイトDP鋼を用いて,まずその組織と引張変形 特性を調べ,次にその加工組織の特徴を明らかにする目的 を持って,SEM-EBSD法を用いた局所方位測定により, 軟質フェライト粒内部の不均質変形状態を観測し,grainsubdivisionの様相を調べた。さらに,これらEBSDの結果 を基に,熱処理条件の相違による二種類のDP鋼の力学特 性の変化について検討した。

Electron Back Scatter Diffraction Analysis for Inhomogeneous Deformation in a Ferrite-Martensite Dual Phase Steel