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タイヤには,様々な種類のゴム材料が用いられている. その中でも天然ゴムは耐亀裂性や耐摩耗性に優れており, 特に耐久性が求められる用途向けのタイヤに不可欠な材料 である.天然ゴムがこの様に優れた耐亀裂性や耐摩耗性を 示す理由は,変形を受けた際に伸長結晶化が起こるという 特性に起因すると考えられている.では,伸長結晶化はど の様な作用を及ぼしているのであろうか? 一般に,材料の破壊は亀裂が進行することによって起こ る.亀裂の先端で伸長結晶化が起これば,自己補強効果に よって亀裂の進展が阻害されるというのが,現在主流の考 えである.この事を確かめるためには,実際に亀裂周辺で 伸長結晶化が起こっていることを確認する必要がある.こ のテーマに関する過去の研究としては,2002年に報告さ れたTrabelsiらの論文が数多く引用されている.この研 究では,試料に亀裂を入れ,その周辺を広角X線回折 (WAXD)で走査する,いわゆるマッピングという手法が 用いられた.その結果として,フィラーを含まない架橋天 然ゴム試料を2倍に延伸すると,亀裂の先端付近のみ200 μm程度の幅で伸長結晶化が起こると報告された.また, 2013年にはカーボンブラックを充塡した架橋天然ゴム試 料についても,亀裂先端のWAXDマッピングを行った結 果が報告されている .しかしながらこれらの報告では, ビーム自体の太さが200 μmあるX線を用いたため,伸長 結晶化の起こった領域を過大評価していたと考えられる. 実際に筆者らが,ピンホールを通すことにより5 μmま で細くしたビームを使って架橋天然ゴムの亀裂周辺を WAXDマッピング解析したところ,Trabelsiらの報告と ほぼ同じ条件において,伸長結晶化していたのは亀裂先端 から20 μm程度であった.Trabelsiらは,結晶化する領 域の大きさを,10倍ほども過大評価していたことになる. さて,上に述べた筆者らの報告において,用いた試料は カーボンブラックを含まない,いわゆる「純ゴム」であっ 技術論文 放射光を用いた,天然ゴム亀裂先端における 伸長誘起結晶のWAXDマッピング解析

WAXD Mapping Analysis of Strain-induced Crystals at the Crack Tip of Natural Rubber Using Synchrotron Radiation