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歴史津波研究や津波工学研究では,全国各地の痕跡記録 を収集・蓄積する努力がなされてきた.しかしながら, これまで収集・蓄積された全痕跡記録に,共通の判断基 準を適用して信頼度を評価し,年代を遡ると信頼性がど の程度低くなるか等の全体像を把握した例はない.以下 では,「痕跡の信頼度」に関する既往知見を,(1)1960 年チリ津波以降,(2)同津波以前の定義(判断基準)に 大別した上で整理する. (1)1960年チリ津波以降の痕跡の信頼度 表-1(a)に示す1960年チリ津波以降の痕跡の信頼度 の定義は,1960年チリ津波合同調査の際,羽鳥(1961) によって(A, B, C)が定義された.それは,羽鳥(1983), 首藤・卯花(1984)に引き継がれ,更に,首藤・卯花 (1995)によってDが付け加えられた.津波災害調査・ 測量調査の結果は,1960年チリ津波以降,これに従って 整理され,現在の津波災害調査の基礎となっている. (2)1960年チリ津波以前の痕跡の信頼度 歴史津波研究では,古文書等から各地の痕跡記録の調 査が行われている.特に,年代が遡るほど信頼度が低い データが多くなり,活用上の課題となっている.都司・ 松岡(2011)は,古文書等の信頼度に関する事例や課題 を整理している.近代津波においても,1960年チリ津波 以前は,痕跡の信頼度が定義されていなかったため,こ の時期の痕跡記録には,津波当時の調査者,記録者によ る信頼度は付記されていない.1960年チリ津波以前の貴 重な記録を,より活用し易くするためには,1つ1つの痕 跡の信頼度の検討が必要となる.土木学会(2002)は, 古文書・郷土史等に記載された痕跡の活用について,表-1 (b)に示すように,1960年チリ津波以前の痕跡の信頼度 の判断基準を提案した.この定義表は,古文書等に残さ れた痕跡記録の現在位置,及び,再測量による高さの確 信頼度を考慮した津波痕跡データベースの構築 Development of Tsunami Trace Database with Reliability Evaluation on Japan Coasts