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者による断層モデルの提示があり,それに基づいて数値 計算を行って被害を推定してきた.しかしながら,東日 本大震災のように地震マグニチュード(本稿では断らな い限り,モーメントマグニチュードを指している)9.0と いう想定以上の地震が発生すると,事前に予測した津波 高さを遥かに凌駕する巨大津波が来襲するため,ハザー ドマップに代表されるように,用意してきた事前・事中 の対策効果は限定されたものとなる.それどころか住民 に安全だと思わせたきらいもある. このようなことの反省から,津波防災における想定に 対する考え方を抜本的に見なおして,今後,想定が原因 となって津波被害が拡大することがないように,工夫が 必要である.本章ではその課題と対策を整理する. (1)断層モデルの固定化 地震研究により力学的な観点から断層パラメターが提 示されてきた.1つの断層モデルを,地震マグニチュー ドはもとより,断層パラメターのすべてが,所与の条件 として数値で与えられることによって,利用者により断 層モデルのすべてのパラメターは決定論的に捉えられ る.一旦パラメターが変化すれば,確率的に想定を超え る津波が来襲することになる.利用者はこのことを念頭 におかなければならない. 断層モデルは地震マグニチュードを含め,8個のパラ メターで記述される.このパラメターセットは,プレー ト境界の制限に基づいた物理的に起こり得る範囲におい て,多様に存在すると考える.この範囲内において,各 パラメターを系統的に変化させ,それぞれのモデルを用 いて地域に到達する津波の高さを求め,その統計を取る と,地域に到達する津波の高さは,1つに定まるもので はなく,パラメターの取り方,即ち地震の発生の仕方と, 地域の地理的位置,および波源から地域までの海底地形 多様な津波発生を考慮した南海地震津波の再考 Revisiting the Great Nankai Trough Earthquake Tsunami Considering the Uncertainty of Source