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近年,東部瀬戸内海においては栄養塩不足が原因でノ リの色落ちが頻繁に発生してノリ養殖に打撃を与えてい る.瀬戸内海では溶存態無機窒素(DIN)濃度が3 μMを 下回ると色落ちが始まると言われており(渡邊,2004), 色落ちしたノリは商品価値が著しく低下するため養殖業 に及ぼす影響は深刻である.栄養塩不足の原因について は大型珪藻による消費,外洋からの供給量の低下,陸域 負荷の減少,物理的輸送など多くの要因が重なっている と考えられている(瀬戸内水研,2005).播磨灘北部にお いては,これまでに陸域負荷(原田・反田,2011),底泥 からの溶出(神山ら,1998;山本,2008)や大型珪藻に よる消費(堀ら,2008)による栄養塩環境への影響が指 摘されている.また,貧栄養水塊の漁場への流入など物 理的要因の重要性も指摘されており,阿保ら(2006)は 西部海域(燧灘)からの貧栄養塩水塊の移流により東部 瀬戸内海の栄養塩濃度が低下することを指摘している. ノリ色落ち被害対策としては,モニタリングによるノ リ色落ち予測(高木ら,2012)の他,施肥による栄養塩 添加,ダムの追加放流や下水処理緩和運転などによる栄 養塩供給量の増加が試みられている(反田,2011).下 水処理緩和運転は,下水処理過程の硝化・脱窒を抑制し て下水処理水の無機態窒素を増加させることである.播 磨灘北部の加古川河口にある下水処理場では,ノリ色落 ちが発生する冬季に養殖場の栄養塩環境を改善する試み として,下水処理緩和運転を2008年より試行している. 本研究では,加古川河口域のノリ養殖場における陸域か らの栄養塩供給の影響を明らかにするとともに,下水処 理緩和運転による栄養塩環境の改善効果を評価した.

Effects of Nutrient Discharge on Nori Aquaculture Area in Kako River Estuary