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近年,海に隣接する大都市におけるヒートアイランド 対策の1つとして,都市人工排熱を集積し,温排水とし て河川や沿岸部へ放出する取り組みが見られる(妹尾ら, 2006).このような対策は,大気と比較して熱容量がは るかに大きい水域に都市排熱を放出することにより,大 気へ放出される熱負荷を低減させ,ヒートアイランド現 象の緩和を目指すものである.一方,ヒートアイランド 現象が顕著となる夏季には,大都市に隣接する閉鎖性海 域では密度成層による鉛直混合阻害により底層貧酸素化 が著しい(入江ら,2004).そこで,都市排熱を含んだ 水を海域に放流することにより,大気への都市排熱放出 量の削減と閉鎖性海域の鉛直混合の両者が期待され,海 域環境の改善も想定される(図-1参照). 一方,ヒートアイランドを考える上で,隣接する海域 の海面温度は海陸風の強度の重要なファクターであり, 臨海都市の気温に海面温度が影響を与えるという議論が ある.大阪湾において,玉井ら(2007)は海面温度を 1°C低下させることによって都市部の最低気温を0.3°C低 下させることができるとしている.また,二宮ら(2009) は,大阪湾の 1°Cの海面温度上昇は都市の平均気温を 0.6°C上昇させるという結果を数値計算から導いている. 上述したような,海域を利用したヒートアイランド対 策の有意性を評価するためには,日常の気象変動を正し く考慮しつつ,海域へ放出した都市排熱の海中での挙動 と熱循環として大気海洋熱交換に及ぼす影響について検 討する必要がある.既往研究(森ら,2008)においては, 海面温度が気象条件に大きく左右されるにも関わらず, 気温は一定,風速は無風を仮定しているなど,大気が海 洋に与える影響について十分に考慮できているとはいえ ない.そこで本研究では,大阪湾を対象として湾内の熱 循環を評価することができる数値モデルを構築し,気象 変動を考慮し海域の表層の流動および気液界面における 熱輸送に及ぼす影響を考慮した上で,都市排熱を海域に 放出することによる大気への排熱量の低減効果について 定量的な影響評価を行う.

Numerical Simulations of Urban Heat Release into Osaka Bay Considering Meteorological Data