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近年,気象の極端化が顕在化する中で,時間雨量 50mm を超える豪雨が稀ではなくなってきている.東 京では 50mm/h を設計強度とする「雨水排除システム」 が整備されている.しかし,この強度をはるかに超え る豪雨に見舞われると,都市域(堤内地)では深刻な 内水氾濫が生じ,都市河川では洪水が発生することに なる.この場合,河川水位の上昇に伴い,雨水吐を介し た下水道からの水の流れや下水道内の流れそのものにも 顕著な影響が現れるようになる.状況によっては,河川 から下水道内への逆流が生じるような事態にもなり得 る.そして,さらに降雨の規模が増大すると,河川から の越水が発生して,外水氾濫にまで到ることも懸念され る.東京都 23 区などのような高度に都市化されたエリ アには,浸水から街を守るため,下水道と都市河川とが 一体となって機能する「雨水排除システム」がすでに整 備されている.このようなエリアにおいて発生する浸水 ならびに洪水事象を,これまで以上に的確に捉えるため には,現状に即した数値予測手法が必要である.本研 究で用いた数値予測手法 1) は,都市内の「地上-下水 道-都市河川」の雨水の流れを一体的に解くものであ る.この手法には補正係数はもちろんのこと不必要な 仮定や仮説は持ち込まれておらず,現象を力学法則の みに基づいて可能な限り精緻に解くことができる.ま た,実在する都市インフラについての情報や,土地利用 状況に関わる情報がすべて忠実に考慮され計算される. 本研究は,この手法を東京都 23 区の北西部を流れる 石神井川流域に適用して検討を行ったものである.こ の流域ではこれまでに幾度となく氾濫被害が発生して おり,最近では 2005 年と 2010 年の二度にわたり下流 域で外水氾濫被害が生じている.著者らのこれまでの 検討と同様に,本研究でも 2005 年に東京都杉並区で発 生した豪雨(ここではこれを「杉並豪雨」と呼ぶ)時 のデータを対象降雨とし,流域内の浸水の数値予測を 行った.本論文では,対象エリアの浸水危険度を明ら かにするとともに,下水道と都市河川とを結ぶ雨水 吐を介した水の流出入に特に注目して考察を加えた. 本研究に関連する研究のうち主なものを挙げると,名 古屋市堀川流域を対象とした武田ら 2) の研究,遠賀川流 域を対象とした秋山ら 3) のもの,神田川流域を対象とし た福岡 4) ら,ならびに関根 5) らのものなどがある.詳 しくは元論文を参照されたい. 石神井川流域を対象とした豪雨時の 内水氾濫と河川洪水流の一体予測計算

INTEGRATED NUMERICAL PREDICTION OF URBAN INUNDATION AND RIVER FLOOD IN THE SHAKUJII RIVER BASIN