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多孔質体中の自然対流の詳細な解明は工学的に非常 に重要である.例えば,地下の地熱貯留層周辺の亀裂 を有する岩体は多孔質体と考えられ,その内部での熱 水の流動とそれに伴う熱移動の詳細な解明は,地熱を 効率よく採取する上で欠かせない. 多孔質体中の自然対流の詳細な解析方法の1つとし て,数値シミュレーションによって多孔質体中の流動, 熱移動を再現する方法が挙げられる.増田らは,基礎 式にダルシー則を用いて地熱貯留層内の熱移動の解析 を目的とした数値解析プログラムを開発し,立方体内 の飽和多孔質体中の自然対流の3次元数値解析を行っ た.この手法では,流体と多孔質体を区別しないため, 計算を行う際に多孔質体の透水係数や,間隙の流体と 多孔質体の平均化された熱伝導率が必要となる.この 透水係数や多孔質体の平均化された熱伝導率を用いて, 現在までに多くの計算が行われている , .このよう な手法は,広い領域において多孔質体中の自然対流現 象の概要を把握する場合には非常に有効である. 一方で,透水係数や多孔質体の平均化された熱伝導 率は,多孔質体を構成する固体粒子配置の影響を強く 受け,空間的に一様でない場合もある.したがって,よ り厳密かつ詳細に多孔質体中の自然対流の計算が必要 な場合,固体粒子よりも十分細かい流体計算格子を用 いて,透水係数や多孔質体で平均化された熱伝導率な どを用いず,多孔質体の間隙における流動・熱移動や 固体粒子内部での熱伝導を直接計算する手法が望まし い.また,多孔質体は非常に複雑な内部構造を有する ため,上記のような計算を行うためには,多孔質体の 固体領域と間隙の流体領域を容易に扱える手法の構築 が必須となる. 以上のような背景をふまえ,著者らは単純な構造 格子を利用し,多相場モデルに対して多相間の熱的 連成を考慮することで,多孔質体の固体領域と,間隙 の流体領域を容易に扱える流体・固体・熱連成モデル を新たに提案した.そして,モデルの基本的な特性を 検証するために,同軸二層円筒の熱伝導計算,発熱水 平円柱周りの自然対流計算を行い,良好な結果を得た. しかし,多孔質体中の自然対流への適用性の検証につ いては,簡単な数値実験を行って考察を加えたに留まっ ている.そこで本論文では,多孔質体に対し以下の計 算を行い,提案したモデルの多孔質体中の自然対流へ の適用における基本的な特性について検討する.

Applicability of Multiphase Model to Natural Convection Flows in Porous Media with Thermal Conductivity