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わが国の歯科補綴学の特徴は,補綴治療の技術体系 を日進月歩更新しているだけでなく,多方向の学際的 な研究フィールドを有していることであろう.それら のいくつかは専門学会を形成し,ある時は垂直的,あ る時は水平的に歯科補綴学と連携することによって, 互いに発展・深化し合う関係が築かれている.そうし た学際的な研究フィールドは,当然ながら他の専門領 域とも繋がっている訳であり,時として歯学領域の枠 を越えたイノベーションの胚子を宿す可能性を持って いる. 顎口腔機能学も歯科補綴学に隣接した学際的研究 フィールドの一つであり,その源流は咬合学,口腔生 理学,人間工学などに求めることができる.近年にお いては,生体機能のセンシングやバイオメカニクスと いった手法を用いて,咀嚼・嚥下機能をより定量的に 解析し可視化する試みがさかんに行われてきた.その 成果のいくつかはすでに実用化され,あるいは実用化 段階に入り,歯科補綴のみならず,高齢者歯科や摂食 嚥下リハビリテーションの臨床現場で咀嚼・嚥下機能 をモニタし診断するツールとして期待されている. 筆者らも,歯科補綴治療の中で感じた「舌は機能時 にどのように口蓋と接触しているのだろう?」という 臨床疑問が端緒となって,今日まで咀嚼・嚥下時舌圧 の研究を続けてきた.その間,こうした学際的研究 フィールドの橋渡しによってさまざまな分野とのコラ ボレーションが実現し,それが研究の継続に繋がった と考えている.今回,日本補綴歯科学会で企画された 「口腔機能の客観的評価としての舌圧測定:その意義・ 開発から展望まで」というテーマのもとに,筆者らが 取り組んできた咀嚼・嚥下時舌圧測定法について紹介 する機会を得たので,あわせてそこから始まる臨床イ ノベーションの可能性について論じたい.

What tongue pressure means in mastication and swallowing