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厚生労働省は本年 6月,介護を受けたり寝たきりに なったりせず,制限なく健康な日常生活を送ることが可 能な期間を示す「健康寿命」が,2010 年で男性が 70.42 歳,女性が 73.62 歳だったとする算出結果を発表した. 一方,平均寿命は 2010 年には男性で 79.64 歳,女性 で 86.39 歳であったことから,健康寿命との差は男性 で 9.22 年,女性で 12.77 年もみられた.平均寿命と 健康寿命との差は日常生活に制限がある「不健康な期間」 で,この差が拡大すれば医療費や介護給付費を多く消費 する期間が増加することになる. われわれ補綴歯科を担う研究者・臨床医は,平成 16 年に日本学術会議第 7部咬合学研究連絡委員会が作成 した対外報告「咬合・咀嚼が創る健康長寿」が提言し た内容を踏まえ,「咬合・咀嚼が創る健康長寿」を学術 大会のメインテーマに掲げ,健康寿命の延伸に果たす咬 合・咀嚼の役割を会員や国民に強調してきた.健康長寿 を達成するためには,要支援や要介護の状態にならない ようにすること,あるいはもし要支援や要介護の状態に なったとしてもその状態がそれ以上悪くならないように することがきわめて重要であり,これが「介護の予防」 や「介護の重症化の予防」である.補綴歯科は,咬合・ 咀嚼・嚥下の「機能」を回復することを通して,われわ れが従来考えていたよりもはるかに大きなインパクトを 「介護の予防」や「介護の重症化の予防」に与えている. 「介護予防」・「介護の重症化の予防」には,1口腔機 能の向上,2運動器の機能向上,3栄養改善,の 3つ の柱が重要とされている が,これらに対して,いく つかのよく計画された介入研究の結果から,補綴歯科治 療がもたらす咬合・咀嚼・嚥下機能の回復・維持が,口 腔機能の向上はもとより,運動器の機能向上や高齢者の 栄養の改善にも大きく貢献することが次第に明らかにさ れつつある. 本論文では,補綴歯科が健康長寿に与えるインパクト について,介入研究を含めて優れた臨床研究のエビデン スから論じてみることにする.しかしながら,この分野 日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 4 : 397-402, 2012

The Impact of Prosthodontic Care on Healthy Longevity and Minimizing Nursing Care Needs