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序 文 膿胸に代表される感染性胸水は臨床の場においてし ばしば経験する呼吸器感染症のひとつである.感染性 胸水は細菌性肺炎の 50~60%に合併する.細菌性 胸水における細菌学的検討では,結核以外では,肺炎 球菌に関連するものが最も頻度が高いとされ,膿胸に おいてはグラム陽性または陰性菌の好気性菌単独感染 以外にも,しばしば好気性菌と嫌気性菌と混合感染が 認められる. β―溶血連鎖球菌は,化膿性咽頭炎や皮膚膿痂疹な どの化膿性病原菌として知られている.なかでも,β― 溶血A群連鎖球菌である Streptococcus pyogenesは, 致死性深部臓器化膿疾患や連鎖球菌性毒素性ショック 症候群(STSS,Streptococcal toxic shock syndrome) の原因となり,ヒト感染症の重要な起因微生物のひと つである.近年,細菌学的および臨床像において S. pyogenesに酷似している Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisによるヒト感染症が報告された. 本菌は,ヒトの咽頭,皮膚または泌尿生殖器に定着し, ときに STSS や感染性心内膜炎などの重症深部感染症 を引き起こすとされている. 今回,われわれは胸水から S. dysgalactiae subsp. equisimilisが反復して検出された膿胸の 1例を経験し た.本菌が呼吸器領域感染症の起因菌として検出され ることは極めてまれと考えられここに報告する. 症 例 患者:63 歳,女性. 主訴:労作時呼吸困難. 既往歴:1982 年関節リウマチ,1993 年右人工膝関 節置換術,1994 年左人工膝関節置換術. 家族歴:特記事項なし. 嗜好:喫煙歴なし,飲酒歴なし.ペット飼育歴およ び家畜接触歴なし. 現病歴:2001 年 4 月から関節リウマチ(臨床病期 IV期)のために,プレドニゾロン 7.5mg 日の内服を 開始し,2002 年 5 月からはシクロスポリン 150mg 日 との併用で経過観察されていた.2005 年 4 月 27 日労 作時呼吸困難を訴え,当科を受診.同日の胸部X線 写真でガス貯留を伴う胸水貯留を認め,緊急入院と なった. 入院時現症:身長 154cm,体重 46kg.体温 36.6°C, 血圧 172 100mmHg,脈拍 96 min(整)および呼吸 数 16 min であった.眼結膜に貧血と黄疸なく,咽頭 や扁桃腺に異常なく,表在リンパ節は触知しなかっ た.胸部聴診では,心音に異常なかったが,右下肺野 で呼吸音の減弱を認めた.肝脾腫なく,皮膚および神 経学的所見も異常なかった.両側手指関節にリウマチ による変形が認められた. 入院時検査成績では,末梢血白血球数は 6,000 μL (好中球分画 98%)で,血清CRP高値(17.5mgmL ) および赤沈亢進(112mm hr)であった.動脈血液ガ ス所見は室内気呼吸下で pH 7.35,PaO2 70.6Torr お よび PaCO2 35.6Torr と低酸素血症を認めた.誘発喀 痰検査では,有意な病原微生物は検出されなかった. 入院時胸部X写真正面像(Fig. 1a)および胸部CT 写真(Fig. 1b)において,右胸腔に液面形成を伴う 胸水貯留像を認めた.皮下気腫および縦隔気腫はな かった. 入院時右胸腔穿刺の結果では,胸水の総細胞数 18,000 mL(好中球 98%)で,悪臭を伴う膿汁で(Fig. 2a),塗沫グラム染色(Fig. 2b)で,好中球を背景に, グラム陽性球菌が多数認められ,多核白血球による同 一の細菌の貪食像が認められた(矢印). 入院時経過:入院直後に施行した胸腔穿刺の結果か 症 例

nihon naika gakkai zasshi

The Both Legs Gas Gangrene due to &lt;i&gt;Streptococcus Dysgalactiae&lt;/i&gt; Subsp. &lt;i&gt;Equisimilis&lt;/i&gt;, Resulted in Amputation of Right Leg