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タンパク質は適切な立体構造をとることでその生理 機能を発揮するが,劇的に構造を変化させることで 不溶性の凝集体を形成することがある.特に,βシー ト構造に富んだ線維状の形態をもつタンパク質凝集体 はアミロイドとよばれ,それらの脳・神経組織への蓄 積は神経変性疾患の発症要因であることが示唆されて いる . なぜ,アミロイド形成が神経変性を引き起こし疾患 の発症につながるのか,その答えはいまだ明確に示さ れていない.しかも,アミロイド化するタンパク質が 同じ種類でも,発症年齢や罹病期間といった疾患の表 現型は患者によって大きく異なる.アミロイドの分子 構造に多型が存在することが,表現型を複雑にしてい るという議論もあるが ,その詳細は不明である.そ もそも,疾患の原因タンパク質単独のアミロイド化だ けで発症や症状が説明されがちだが,脳・神経の中で 実際に観察される凝集体(封入体)には実にさまざま なタンパク質が巻き込まれていることは注目に値す る .つまり,どのタンパク質が凝集体に巻き込まれ 機能喪失するかによって,影響を被る細胞機能,ある いは疾患の表現型が異なるのではないかと推察され る.もちろん,どのようなタンパク質でも凝集体に巻 き込まれるわけではない.でなければ,ヒトは最終的 に 1つの大きな凝集体となってしまう.したがって, アミロイドが異種タンパク質を巻き込む際には,何ら かの制御メカニズムが働いているはずである. アミロイドが有する興味深い物理化学的特徴とし て,「シーディング」とよばれる現象をあげることが できる .シーディングとは,タンパク質がアミロイ ド化する際に,すでに形成したアミロイドが鋳型 (シード)となって,アミロイドへの構造変換が促進 されることをいう.通常,シーディングは同じ種類の タンパク質間で選択的に生じるが,まれに,異なるタ ンパク質のアミロイド化を促進することがある(クロ スシーディング).つまり,疾患の原因タンパク質が 変異などによりアミロイド化し,それらがシードと なって,異種タンパク質のアミロイド化を促進させ各 種機能を喪失させている可能性が考えられる(クロス シーディング仮説).そこで筆者らは,神経変性疾患 の 1種であるハンチントン病をモデルとして,アミロ イドのクロスシーディングに焦点を絞り,その仮説の 検証に挑んでいる . ハンチントン病(HD)は,ハンチンチン(htt)遺 伝子に存在する塩基配列 CAGの繰り返しが 40回以 上に増加することで発症する神経変性疾患である . CAGはグルタミンをコードするため,htt遺伝子の翻 訳産物であるタンパク質 HTTにはグルタミンの鎖 (polyQ)が存在し,polyQが長くなればなるほどアミ ロイド様の HTT線維が形成しやすくなる .筆者ら は,HTT線維が RNA結合タンパク質 TIA-1という異 種タンパク質の線維化を促進することを見いだし,以 下に示すように,クロスシーディング仮説を支持する 重要な実験結果を得た.

Cross-seeded Fibrillation of Q/N-rich Proteins Offers New Pathomechanism of Polyglutamine Diseases