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幼若ホルモン(Juvenile hormone; JH)は,セスキテルペ ノイド骨格を持つ昆虫に特有のホルモンで(図1),脱皮・ 変態,生殖,休眠,相変異など,さまざまな昆虫の生理現象 の制御に関わっている.そのため,1967年にその化学構造 が決定されて以来,JHおよびそのアナログは,昆虫に選択 的に作用し,哺乳動物には毒性の低い殺虫剤として利用でき るものと期待され,多くの研究がなされてきた.その結果, メソプレンやピリプロキシフェンを代表とする強力な JH活 性を持つ昆虫成長制御剤(Insect Growth Regulators; IGR) が開発され,現在,蚊などの衛生害虫や,コナジラミなど農 業害虫の防除に利用されている.これらの JH剤は,内在性 の JHが存在しない,胚発生初期や蛹変態期に作用し,胚発 生や脱皮・変態を異常にすることにより,その効果を発揮 する.しかし,JH剤(JHアゴニスト)は,もともと体内に 高濃度の JHが存在する幼虫期には効果がなく,チョウ目昆 虫のように幼虫が加害ステージである害虫に対しては,逆 に幼虫の摂食期間を延長して被害を増加させる恐れもある. 一方,JH作用を妨げる,抗 JH剤(JHアンタゴニスト)は, 幼虫期に作用して,早期に変態を誘導し,より効果的に害虫 の幼虫による食害を減らすことができると期待される.ま た,JHはカメムシやバッタなどでは,成虫の卵黄タンパク 質(Vitellogenin; Vg)の合成を誘導し卵巣発育を促進する など,生殖においても重要な作用を持つ.したがって,抗 JH剤は,これらの昆虫の生殖を阻害して次世代の発生を抑 制する効果も期待される.しかし,これまでプレコセンや KF13Sなど,in vivoで抗 JH作用を示す化合物はいくつか見 出されているものの(図2),残念ながら実用的な抗 JH剤は いまだに開発されていない.その原因の一つとして,抗 JH 化合物の標的となる,JH生合成酵素や JH受容体に関する分 子情報が乏しかったことが上げられる. 筆者らは,抗 JH剤開発の生合理的開発に有用な基礎知見 を得るために,昆虫ゲノム情報,マイクロアレイ,形質転換 技術,RNAi,ゲノム編集技術など,新しい遺伝子解析技術 を駆使して,JHの生合成やシグナル伝達に関わる昆虫特異 的な分子の探索と機能解析を行ってきた.本稿では,私たち DOI: 10.1584/jpestics.W14-37

Juvenile hormone related genes as targets for developing biorational insecticides