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私の所属する研究室では,抗腫瘍活性物質の開発を目指 し,さまざまなフッ素化合物の合成および活性評価を中心に 研究を行っている.すなわち,医薬品開発を指向した合成研 究である.しかし最近になって,私たちは農薬化学にも強い 興味を抱きはじめた.ここ数年,農薬におけるフッ素化合物 の重要性がますます重要視されるようになってきたからであ る.調査によると市販されている約30%の農薬には,フッ 素原子がその構造のどこかに入っている.また,現在開発段 階の農薬候補化合物も含めるとその数は,50%にもおよぶと 言われている.2007年に日本農薬(株)が上市したフルベン ジアミドは,含フッ素農薬の最近の成功例の一つで,完全に フッ素化されたイソプロピル基を置換基に持つユニークな構 造は,私をこの分野に引き込むきっかけになった化合物であ る(図1). 2014年8月10日から14日,248th ACS National Meeting & Exposition(第248回アメリカ化学会年会)がサンフラ ンシスコで開催されるため参加を思案していた矢先,13th IUPAC International Congress on Pesticide Chemistry(第 13回 IUPAC農薬化学国際会議)が同時に開催されるという ことを知り,早速,参加することを決めた.初めて参加する 農薬化学国際会議は,私の期待を遙かに上回ることとなっ た.農薬化学研究の世界最前線を肌で感じ,そのレベルの高 さに圧倒された.とりわけ,BASF, Syngenta, DuPont, Bayer, Dowなど世界最大手化学メーカーの研究発表に目を惹かれ た.中でも私を釘づけにしたのは,8月12日の「Leads from Crop Protection against Neglected Diseases」と題された BASF社Matthias Witschel博士の講演である.Witschel博士 は,BASF社がこれまでに行ってきたNeglected Diseasesに 関する壮大な研究成果を一時間足らずの間に一挙に公開し たのである.「Neglected Diseases=顧みられない熱帯病,見 捨てられた病気」とは,患者が多く存在しているにもかか わらず,積極的な対策がとられていない病気を示し,とく に寄生虫感染のアフリカ睡眠病やデング熱などがNeglected Diseasesとして数えられる.私には,農薬は除草剤など作物 の生産性を向上させるものという固定観念があった.そのた め,農薬が人を対象とするくすりとして,しかも開発の進ま ないNeglected Diseasesのリード化合物となるという,わず DOI: 10.1584/jpestics.W14-20

13th IUPAC International Congress on Pesticide Chemistry: Report (I)