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2.一次イオン照射による拡散・偏析現象 二次イオン質量分析法(SIMS: Secondary Ion Mass Spectrometry)はイオン照射によるスパッタリングを利用し た物理分析手法で,微量元素の深さ方向分析が可能なこ とから,半導体,金属,セラミックス,有機物などの幅 広い分野で,材料,プロセス,デバイスなどの評価に用 いられている。特に近年では,各種デバイスの高密度・ 微細化に伴ってナノレベルの分解能を持った深さ方向分 析が不可欠であり,SIMSにおける深さ分解能の向上が 強く望まれている。この要求に応えるため,現在,低エ ネルギー化した一次イオン(1 keV以下)を用いた測定 が頻繁に行われている。 しかし,ナノレベルの分解能を必要とする近年の材 料・プロセスの評価では,一次イオンの低エネルギー化 のみでは解決できない問題が存在する。スパッタリング が定常状態に達する前と後でエッチング速度が著しく異 なり,測定プロファイルの深さ換算において換算結果に ずれが生じるという問題(プロファイルシフト)や一次 イオンの入射角度に依存して表面荒れが起こり,深さ分 解能を下げるという問題は,一次イオンの低エネルギー 化に伴って,より顕著になることが知られており,これ までに数多くの研究がなされている1~7)。また,一次イ オン照射によって引き起こされる拡散・偏析現象もその ひとつであり,深さ分解能の低下を導く。しかし,低エ ネルギー照射下での拡散・偏析現象に関する報告はほと んどない。本稿では,この拡散・偏析現象に基づく深さ 分解能の低下について考察する。

Diffusion and Segregation Effect in SIMS Depth Profiling using Low-energy Oxygen Primary Ions