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船舶,橋梁,圧力容器などの大型構造物は多くの部分で溶接継ぎ手が採用されている.しかし溶接時の熱影響 のため溶接止端部には大きな引張り応力が残留し,しばしばそこから疲労き裂が発生し破壊に至る事故事例が問 題となっている.さらに近年では,第一種圧力容器が使用開始後 40 年を超えるものが多く使用されており,そ の安全性保障が盛んに議論されている.これらの大型構造物では危険な疲労き裂が発生した場合,構造部分全体 を交換せざるを得ないため莫大な保全費用が予測される.しかし発生した疲労き裂であったとしても疲労強度を 低下させない無害なき裂に変化させられれば,構造物の信頼性向上のみならず保全費用の大幅な削減が可能にな るだろう. 近年,ショットピーニングなどにより導入される圧縮残留応力の効果で,これら構造物の疲労き裂や応力腐食 割れを防止する研究が見受けられるようになった 1)-2).しかし,すでに発生した疲労き裂を圧縮残留応力により 無害化し,使用し続けられるようにする研究は例を見ない.著者らは,既往の研究でショットピーニングや過大 荷重効果などを使用したき裂の無害化に関する研究を進めてきた 3)-6).その結果,高強度鋼に対しては深さ 0.2mm 程度の人工き裂を十分に無害化できることを確認している. そこで,本研究では溶接構造用圧延鋼材 SM490Aの溶接止端部に人工き裂を導入し,そこにエアー式ニードル ピーニングおよび超音波式ピーニングを施工することによる疲労強度の改善に関する調査を行った.これらのピ ーニング装置の特徴は可搬性があり,屋外で作業できることである.よって大型構造物に発生したき裂を現場で 無害化することを模擬することができる.それにより溶接部に発生したき裂を,どの程度の寸法まで無害化でき るのかを知ることは工業的に極めて興味深い.本研究ではこれらについて詳細に調査したので報告する. 溶接止端部にき裂を有する構造用圧延鋼のピーニングによる疲労限度向上 およびき裂の無害化 北條 恵司,高橋 宏治,安藤 柱,関口 祐司 Improvement of Fatigue Limit and Rendering Crack Harmless by Peening for Rolled Steel Containing a Crack at the Weld Toe Zone