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1. 緒言 魚卵の冷凍保存は水産業界における効率的な養殖を可能にするとともに,絶滅危惧種の保存の面からも重要な課題 である.現在,生体卵の凍結保存に関して多くの研究がなされているが,凍結保存が可能となっているものの多くは哺乳 類に限られている.その原因として,魚卵はサイズが大きく卵内の含水量が多いため冷却時の氷晶生成による細胞の損 傷があり,冷凍保存技術は確立できていない.卵内凍結による損傷を防ぐために凍害防御剤を導入する方法があるが, その効果を定量的に評価する必要がある.また,昇温時に見られる再結晶化にも注意する必要があると考えられる.そこ で本研究では,魚卵のモデル化として人工イクラとして知られる方法を用い,凍害防御剤水溶液をゲル状物質で包み込 む体系とし,示差走査熱量計(DSC)を用いて結晶化,ガラス化および再結晶化の各温度挙動を測定した. 2. 実験装置及び方法 全自動ガス冷却システムを有する示差走査熱量計(DSC)を用いて,人工イクラの結晶化温度・ガラス転移温度・再結晶 化温度の測定を行った.ヒートシンク内に,測定用容器のアルミニウムパンに入れた人工イクラと基準物質を設置し,温度 制御プログラムにより冷却・解凍操作を行った.冷却過程では 20°Cから-150°Cまで 20°C/min で冷却し,解凍過程でも 20°C/min で 20°Cまで走査した.サンプル数はそれぞれ 3 個とした.冷媒には液体窒素を用い,基準物質には α-アルミ ナを用いた.溶液として,1wt%のアルギン酸ナトリウム(和光試薬一級)を混ぜ合わせたグリセリン(和光試薬特級)の溶 液,2wt%の乳酸カルシウム溶液(和光試薬一級)を調整した.1.25ml 用のピペットにアルギン酸ナトリウム溶液(1wt%)を 入れ,ピペット内の溶液を乳酸カルシウム溶液(2wt%)に滴下する.これによりグリセリン溶液を含む人工イクラを生成す る.この研究では,滴下量を調整することにより人工イクラの直径を 1.3mm~3.0mmに変化させた. 3. 実験結果及び考察 図1は人工イクラの含有するグリセリン溶液濃度に対する 凍結点・ガラス転移点・再結晶化点を示している.これより 以下のことがわかった.  人工イクラの直径が小さくなると,凍結温度は低下す る.これは含水量の減少により氷の核生成が遅れるた めと考えられる.  グリセリン溶液濃度が 50%以上になると冷却時に内部 凍結することはなく,ガラス化する.  溶液濃度が 50%の場合でのみ,昇温過程での再結晶 化がみられた.よって,20°C/min の冷却・解凍速度で は,グリセリン濃度が 60%以上において,ガラス化によ る冷凍保存,そして再結晶化の無い解凍が可能と思 われる.

Modeling of fish eggs using Alginic acid capsule and evaluation of effect of cryoprotectant