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上肢機能の大部分は,指を有効に働かせるためであ り,指はその最終的効果器として極めて重要な役割を 担っている.指全体の構造において,指骨・指関節は 機能上の中心となる支持組織であり,骨,軟骨,腱組 織などの複合組織から構成されている.この基本骨格 に,皮膚・軟部組織,固有の神経・血管系,および爪 組織が加わって,指の形態・機能が構築されている. 指の再建手術では,正常指が有するこのような複雑 な形態的・機能的特徴を,どの程度備えた再建がなさ れたかにより,術後成績が大きく左右される.このた め,外傷,先天性,腫瘍切除後に生じた手指欠損に対 する再建手術は,極めて困難とされている.特に,関 節は,いったん損傷すると“再生”できないものと考 えられていた. 現在,手指欠損の再建治療では,足趾を顕微鏡下に 血管吻合を行って手指に移植する術式(Toe-to Finger transfer)が,最も一般的に行われている.しかし, この方法は,手術手技が複雑で,また,長い手術時間 が必要とされている.さらに,足趾を失うという点に 最大の問題があり,小児や女性への手術適応は極めて 制限されている(図 1). この問題を解決し得る治療法の 1つとして,近年, 組織の再構築に関わる再生工学,tissue engineering が注目されてきている.この tissue engineering で は,(1)特定の組織を作り出す細胞,(2)その細胞の 足場となる基質,(3)細胞増殖や分化をコントロール するサイトカイン,(4)組織生着を左右する血行の 4 つの要素を組み合わせて組織再生を促している. 私たちの研究室では,この基本概念に基づき,高分 化型の細胞を生分解性ポリマーに播種させて手指骨格 の再生に挑戦してきた.その結果,骨,軟骨,腱のそ れぞれの細胞を生分解性ポリマーに組み込み,これら を組み合わせて移植する事により,臨床的に必要な大 きさと複雑な 3次元形態を有する指骨格の再生を可能 とする技術を開発した.そこで本稿では,骨・軟骨・ 腱の同時再生モデルによって再生された指骨格(指 骨・指関節)を紹介する.

Tissue Engineering of the Phalanx and Phalangeal Joint