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序 文 ノ ロ ウ イ ル ス(NV)は Genogroup I(GI)と Genogroup II(GII)の 2つの遺伝子群に分類され,さ らにGI は 16 種類と GII は 23 種類あるいはそれ以上 の遺伝子型に分類されている.国立感染症研究所・ 感染症情報センターの報告によれば,2008 年 9 月~ 2009 年 3 月に国内で発生したNVによる集団感染は 293 事例と報告されている.このうち,約 84%にあ たる 246 事例で GII が検出されている.この 246 事例 のうち,遺伝子型別まで実施された 116 事例では約 78%にあたる 90 事例で GII 4 が検出され,その他に はGII 2,GII 6,GII 3,GII 12,GII 13 が検出され ている.この様に,日本国内で検出されるNVの主な 遺伝子群はGII である. NVは培養細胞で培養することが出来ない.そのた め,現在のところNVの診断法としては,RT-PCR法, Real-time PCR法などの遺伝子診断法が多く用いられ ている.また,NV遺伝子型を決定するまでには,多 くの操作手順が必要となるため,これらの遺伝子診断 法では迅速に遺伝子型を同定することができない. 近年,DNA結合色素を含む反応液を用いて,高解 像度の融解曲線分析を行う高分解能融解曲線分析 (HRM分析)が開発され,迅速に SNP,変異,メチ レーションなどのゲノムの多様性を分析することが可 能となった.そこで,我々はHRM分析を用いてGII の遺伝子型を迅速に同定できる遺伝子診断法の開発を 試みた. 材料と方法 HRM分析には LightCycler 480 System(Roche)を 用いた.プラスミドは我々が作成したGII プラスミド GII 3,GII 4,GII 10 の合計 3種類を用いた.この 各プラスミドを 1×10copies 2μL になるように調整 した.NVの遺伝子定量は 1×10copies 2μL に調整さ れたサンプル 2μL を 1×LightCycler 480 High Resolution Melting Master mix(Roche)を用いて全量を 20μL とした.分析は各希釈サンプルにつき 2回測定 を行った.GII 型の HRM分析には我々が新たに設計 したプライマーG2 SNF : 5’-TGT GAA TGA AGA TGG CGT CGA-3’およびウイルス性下痢症診断マ ニュアルに記載されているG2 SKR : 5’-CCR CCN GCA TRH CCR TTR TAC AT-3’ (各 500nM)を用い て反応を行った.2 つのアッセイの PCRサイクル条 件は 95°C10 分 1 サイクル,95°C10 秒,56°C10 秒,72°C 20 秒の反応を 50 サイクルで行い,次にHRMのス テップとして,95°C1 分,40°C1 分の後,60°Cから 97°C へ緩やかに温度を上昇させながら,1°C上昇につき 25 回,連続して蛍光を取得し,各遺伝子型の融解曲線分 析を行った. 結果および考察 我々が作成したGII 3,GII 4,GII 10 の合計 3種 類の内GII 10 をリファレンスとし,HRM分析を行っ た.HRM分析は LightCycler 480 Systemを使用し, 取得した融解曲線データを差分プロットとしてNVの 遺伝子型を区別した.その結果,GII 3,GII 4,GII 10 と各遺伝子型に特徴的な差分プロットが確認され た(Fig. 1).したがって,HRM分析を用いたノロウ イルス診断法は,迅速にNVの遺伝子型別ができるウ イルス診断法であることが示唆された. NV感染症が発生した際には,集団感染事例の疫学 的検討,感染源・感染経路の解明,流行ウイルスの解 析などの疫学調査を行い,その結果を分析し,さらな る感染の拡大防止を行うとともに今後の感染対策を検 討する必要がある.NVには多くの遺伝子型が存在し, 遺伝子型を決定までに,多くの手順と時間が必要とな 短 報

Rapid High-throughput Development on High-resolution Melting (HRM) Analysis for Noroviruses