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熱拡散現象とは,温度勾配が存在する二種類の混合気体 あるいは二種類の混合液体系において,混合物の部分的分 離がおこる現象であり,一般に,高温領域に軽い分子が集 まり,低温領域に重い分子が集まるとされる.また,溶液 における熱拡散はソーレ効果とも呼ばれている. 近年,高分子の分子量分布を求める方法としてこの原理 を用いた温度勾配フィールドフローフラクショネーション が実用化されており,カラム内を高分子溶液が流動する際 に分子鎖が受けるせん断が小さいことから,高分子量鎖が 切断される危険性がなく,カラム内に充填されているポリ スチレン多孔質ゲルの間隙を溶液が流れる従来のサイズ排 除クロマトグラフィーよりも有効であるとする報告が多々 ある.このように高分子溶液における熱拡散について は多くの検討が行われているものの,高分子溶融体につい ては Siriprumpoonthumらによる他はほとんど報告がな い. Siriprumpoonthumらは上下の加熱板に温度差を付した 圧縮成形機を用いて加熱時間の異なる1.5mmまたは3.0 mmのシートを成形し,シート表面から300μmの厚さで 削り取った試料のゼロせん断粘度を測定することによって, 成形時に低分子量成分が高温側表面に偏析することを示し た.この場合,現象の時間依存性を観測するためには時間 毎の試料作成が必要であること,また,試料採取の厚みが ゼロせん断粘度に影響すると予想されることから,熱拡散 現象を連続的に精度良く観測することは容易ではない. そこで筆者らは,熱可塑性樹脂の粘弾性測定に広く用い られている回転型レオメーターを用いて高分子溶融体の熱 拡散現象を連続的に観測する方法について検討したのでこ こに報告する.

Measurements of Thermal Diffusion Using Rotational Rheometers for Polyethylene Melts in Thermal Gradient Field