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X 線自由電子レーザー(XFEL)装置は,5712 MHz の 大電力高周波加速器で加速された幅 30 フェムト秒でピー ク 3 kA の電子ビームをアンジュレータという装置に通し て,X線レーザーを発生させる.この装置のための加速 器は線型加速器で,大電力高周波の生成の技術的な制限 で,電子ビームおよび X 線レーザーの発生は 60 Hz まで の繰り返しパルスに制限される.アンジュレータ内では, ビームの進行軌道に沿って設置された N極と S 極の永久 磁石列によるサイン波状に強度変化する磁界と電子ビーム が相互作用して,X線レーザーが発生する.発生原理は, サイン波の磁場と 3 kA という大電流での SASE(Self Amplified Spontaneous Emission)による非線形増幅過程 で,大電流の部分のみで X 線レーザー光が発生する.こ のような発生方法によるレーザー光は,ほぼ電子と同じパ ルス形状およびタイミング情報をもつ.このため,レーザ ーの照射タイミングを決定するということは,加速器の電 子ビームに同期したタイミング信号(時間基準)を用意す ることと同義である.この信号は,X 線レーザーパルス の幅以下の時間精度であることが必要で,トリガーパルス または時間基準高周波信号である.この信号で,同等の時 間決定精度をもった実験装置を駆動し,そのような実験の 代表格がポンプ・プローブ実験である.ちなみにポンプ・ プローブ実験とは,ポンプ光で照射資料の活性化を行い, プローブ光で活性化し変化する現象の時間発展を観測する 方法である.例えばそれは,光励起相転移に起因した分 子・原子の電子分布状態変化を観測することが例としてあ げられ,フェムト秒領域の時間精度が必要である. XFEL でのポンプ光は主にチタンサファイヤレーザーが 使用され,プローブ光は X 線レーザーである.今まで述 べた X 線レーザーのパルス幅および実験からの要求で, このポンプ・プローブ実験における時間決定精度は数十フ ェムト秒以下が必要である.この報告では,以上に述べた 時間精度を実現するように設計・製作中の XFEL 装置の タイミングシステムの紹介を,ポンプ・プローブ実験の照 射タイミング系の例を中心に据えて行う.加えて,短時間 の伝送タイミングおよび時間基準信号の時間ジッタを決め るのは,信号の純度,すなわちノイズの量であり,長時間 の時間・タイミング(位相)変動(ドリフト)を決定する のは,機器およびケーブルなどの環境温度からの影響であ る.本文では,目標を達成するための変動要素を極力除く 機器の設計手法および達成された性能についても紹介す る.

Technology of Precise Irradiation Timing for X-ray Free-Electron Laser(XFEL)