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研究内容 多くの魚種で,初期生活期に,成長に伴う浅海域から 沖合域への生息場所の移行が認められる。一般的に浅海 域は小さな餌が多く,稚魚の捕食者が少ない。これに対 して,沖合域は小さな餌が少なく,捕食者が多い。この ため,浅海域は魚類稚魚の成長生残に適した場所であ ると考えられる。適切な時期やサイズにおける生息場所 の移行が,その後の生残,ひいては加入成功に大きく影 響すると考えられる。 ヒラメは着底(全長 10 mm)から全長 100 mm くら いまでは水深 15 m 以浅の砂地の成育場に生息し,アミ やシラスを摂餌する。全長 100 mm 以降,沖合に移動 し,魚食性に転換する。しかし,移行サイズおよびタイ ミングは,浅海域の餌料環境や水温環境の影響を受ける ため,海域によって異なる。また資源評価により,仙台 湾常磐海域を含むヒラメ太平洋北部系群の再生産成功 率は平均値が高く年間変動が大きい点で,他の海域の系 群とは異なることが知られている。1) そこで本研究では,仙台湾におけるヒラメ稚魚の成長 に伴う生息場所と食性の変化を明らかにして,加入への 影響を考察した。 2011 年 8 月から2014 年 11 月(20112013 年級)に 浅海域(水深 515 m)と沖合域(水深 3080 m)で当 歳魚を採集し,全長,肥満度,食性を調べた。また物理 環境を調査し,これらの結果を海域間で比較した。仙台 湾ではヒラメは着底(68 月)後約 1 年間,全長 250 mm になるまで浅海域に滞在可能であった。さらに,着 底した年の冬から翌年夏にかけて,全長 150250 mm の当歳魚は,浅海域と沖合域の双方に生息していた(図 1)。この時期,浅海域では摂餌個体の割合が 80100 と高く,アミ類,シラス類(主にカタクチイワシ2))が 主要な餌であったのに対して,沖合域では摂餌個体の割 合は 1080 と低く,エビ類,小型魚類が主な餌で あった。同採集時期および同サイズ区分の当歳魚の胃内 容物重量を比較したところ,全長 250 mm までは浅海 域では沖合域に匹敵する摂餌をしていた。このような仙 台湾の特徴は,他海域(主に西日本)の特徴(稚魚は着 底後 23 か月,全長 100150 mm で浅海域から沖合域 に移動)とは明らかに異なった。仙台湾で認められる特 徴は,浅海域において長期的に餌が豊富なこと,水温が 高くなりすぎないこと(<25°C。この水温ではアミの 現存量が維持されるとともに,ヒラメの代謝量が大きく ならない)が起因していると考えられた。 仙台湾のヒラメ稚魚は,浅海域における成長が良好で あること,2) 浅海域に長期的に滞在して大きいサイズで 沖合域に移動することが,それぞれ浅海域および沖合域 における死亡を低下させることで,本海域における高い 再生産成功率に寄与している可能性が考えられた。 なお,再生産成功率は,産卵着底,着底加入の 2 つのフェーズに分けられる。今後は,産卵着底までの 生残過程についても明らかにする必要がある。 本研究は,文科省「複合生態系」プロ研課題の一環と して行った。「複合生態系」では,魚類初期生活史にお いて様々な生息場所を直列的(成長に伴う移行)並列 的(同じサイズで複数の生息場所を利用)に利用する実 態を把握し,そのことが成魚生産に及ぼす影響を明らか にすることを中心課題の一つとしていた。仔稚魚期に成 長に伴って汽水域から海水域に生息場所を移行するニシ ンは典型的な直列的利用型であり,稚魚期に海水域と汽 水域を利用するグループに分かれるスズキは典型的な並 列的利用型である。ヒラメは基本的に直列型であるが, 仙台湾のヒラメは並列的な利用が認められた。「複合生 態系」の成果は,特集論文として本報を含む 15 報が Fisheries Science 84, 85 巻に掲載されている。3) 是非参 照されたい。

nihon suisan gakkaishi/nippon suisan gakkaishi

Ontogenetic habitat shift of age-0 Japanese flounder &lt;i&gt;Paralichthys olivaceus&lt;/i&gt; on the Pacific coast of northeastern Japan: differences in timing of the shift among areas and potential effects on recruitment success