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沿岸来襲外力による堆積物を用いた歴史災害の調査が 徐々に進んでいる.これらの歴史データを確率潮位の算出 に活用すべきである.国内では,津波に対する調査が主で あるが,欧州では高潮による調査も進んでいる.特に,オラ ンダでは,近年の機器にもとづく験潮以前となる1501-1850 年の350年間における10回分の高潮被災記録が報告されて いる.van Gelder (1999)は,このデータを用いて高潮被災 リスクを検討する際に,ベイズ統計にもとづいた解析を行っ ている.近年データ(107年間の年最大潮位)から得られる 推定結果を事前分布に用い,歴史データを加えることで,推 定結果を更新するという考え方である. 歴史データは,近年データに比べると,データが疎である だけでなく,情報として非常に曖昧である.その曖昧さも取 り入れる点で,van Gelderが用いたベイズ統計の手法は成功 しているが,根源的に解決しなければならない点がある.そ れは,時間の順序の扱いである.ベイズ統計で扱うのであれ ば,歴史データによる推定を事前分布にとり,それを近年デ ータにより更新し,その結果をもとに将来の確率潮位の予測 を行うのなら,論理的に筋がとおる.しかし,そうすると,歴 史データの曖昧さをシミュレーションで扱えなくなる.そもそ も,定常モデルを対象にすれば,極値資料に独立かつ均質を 要求されるゆえに,従来の極値解析では,時間の概念が導入 されていない.しかしながら,近年データと歴史データを区 別するなら,時間の経過という概念は,無視できない.本研 究では,経験度を拡張した(モデルの)耐久性(あるいは,デ ータの鮮度)を用いれば,定常モデルに対しても,時間の経過 を明確にした取扱いが可能となることを示す.

Coping with a Dilemma Arised in Combining a Historical Dataset with the Modern Record for the Extreme Value Analysis of Sea Levels