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2011年3月11日に発生した東日本大震災では,青森か ら千葉に至る太平洋沿岸において甚大な津波被害が発生 した(Moriら,2012).三陸海岸では,20mを越える浸 水高が多数の地点で観測され,コンクリート製の巨大防 潮堤の一部は破壊された(Ogasawaraら,2012).また, 宮城県・仙台市以南における砂浜海岸を有する平野部に おいても浸水高は10mを越え,海岸から最大5kmに達す る広大なエリアにわたり津波は遡上しており(Gokon・ Koshimura,2012),これが明治・昭和三陸津波とは大き く異なる本震災の特徴の一つである. 著者らは,このような平野部で砂浜海岸を有する宮城 県名取市等において,集中的な家屋被害調査を実施した ところ,高さ 9m程度の海岸砂丘の背後では建物の流 出・損壊が著しく抑制されていたことが明らかとなった (二瓶ら,2012).砂浜海岸における一般的な津波防災・ 減災対策として防潮林の効果が検討されているが (Danielsenら,2005;Tanakaら,2007),海岸砂丘に着目 した本格的な研究は皆無に等しい.また,砂丘高さを大 きく上回る津波の場合には,砂丘が大きく侵食されるた め,砂丘の耐侵食性を向上させる補強技術の導入が必要 となる. 本研究では,津波の室内実験を行い,津波に対する海 岸砂丘の減災効果(越流量抑制や耐侵食性)の基本特性 を調べるとともに,既往の海岸砂丘を活用しつつ最新の 盛土補強技術を組み合わせた“粘り強く,防災機能を失 うまで崩壊することはない”新形式防潮堤を提案し,そ の有効性を検討することを試みる.後者の盛土補強技術 としては,数多くの土構造物に用いられているジオシン セティックス補強土(GRS,Geosynthetic-Reinforced Soil, Tatsuokaら(1997))を採用する.GRSは擁壁や橋梁等の 補強技術として既に実用化され,最大の利点の一つは耐 震性に極めて優れていることである(Tat suokaら, 1998;Tatsuokaら,2009).そのため,本研究で提示す る新形式防潮堤は津波と地震による複合災害対策にな る.海岸砂丘そのものや新形式防潮堤の津波耐力を検討 するために,大型造波水路を用いて,津波の越流・侵食 実験を行った.具体的には,1津波を模擬した孤立波を 起こして,砂丘の有無や津波条件による越流量の差を調 べるとともに(越流実験),2津波継続時間を長めにす るために段波を発生させて,後述する従来形式・新形式 防潮堤を含む様々な補強条件による砂丘の耐侵食性向上 効果を検討した(侵食実験).

A New Type Tsunami Barrier Seawall of Sand Dune using Reinforcing Technology