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南海トラフでは,海溝型の地震およびそれに伴う津波 がおよそ100年~150年の周期で繰り返し発生している. 地震調査研究推進本部(2001)の長期評価によると,南 海トラフの過去の地震は,3つの震源域が,1つあるいは 2つ以上組合さって活動したと考えられている.特に, 1707年宝永地震は3つの震源域がほぼ同時に,1854年の 安政東海地震と安政南海地震は約32時間の時間差をもっ て活動した.このように複数の震源域(波源域)が空間 的かつ時間的に連動すると,南海トラフに面する沿岸地 域では,そのタイミングによって複数の波源から来襲す る津波が重なり,波高が増幅する可能性がある.河田ら (2003)は,この点に着目し,これらの沿岸地点におい て波高が最大となる津波発生のシナリオ(津波発生の順 序と時間差)を提案し,個々の波源域が単独に活動した 場合よりも波高が増幅されることを定量的に示した.し かし,そのシナリオの発生の可能性(確率)には言及し ていない. 一方,沿岸施設の津波リスクの定量評価手法として確 率論的津波ハザード評価手法が提案されている(安中ら 2006,Suginoら2008).これは,津波波源特性や津波伝 播モデルの不確実さなどを考慮し確率論的手法に基づい て波高とその発生確率の関係を評価する手法である.こ の方法によると,例えば重要施設の設計敷地高を超える 津波の発生確率を把握することができ,対策の必要性を 判断するための有用な情報が得られる. 南海トラフにおける将来の津波の発生を考えると,3 つの波源域がどのような組合せで,どの程度の時間差を もって発生するかといった地震発生の連動性に関する知 見は,現段階では確定されていない.そのため,南海ト ラフに面する沿岸地域の津波ハザードの評価において は,地震発生の連動性も津波波源特性の不確実さの1つ として捕らえる必要がある. 本報では,南海トラフに面する重要施設の津波リスク を評価するために,地震発生の連動性を考慮した確率論 的津波ハザード評価手法を提案するとともに,本手法を 南海トラフ沿いの複数地点に適用し,地震発生の連動性 が津波ハザードに及ぼす影響について検討する.

Probabilistic Tsunami Hazard Assessment Considering Time-Lag of Seismic Event on Nankai Trough