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東シナ海西方に開口する上甑島浦内湾は,毎年,冬か ら春先にかけて現地で「あびき」と呼ばれる副振動の被 害を受けている.2009年2月24~25日には最大全振幅が 300cmを超える副振動が発生し,床下浸水や漁船の転覆 などの被害が生じた.こうした細長く入りくんだ湾は, 通常の風浪の侵入が少なく台風時でも静穏域を提供する ため,従来から生簀などの水産施設の適地となっている. 最近では,天然マグロ禁漁化の趨勢もあって,離島や遠 隔地における水産業は大型魚の養殖に大きな期待をかけ ている.しかし,あびきは周期が数10分の長周期変動で あり,大型生簀などの水産施設に大きな被害を与えるこ とが懸念されている. あびきに関する研究は,長崎港を中心に古くからある が(例えば赤松,1978),あびき発生後の検潮所記録の 解析や数値計算による再現が中心であり,現地観測体制 を敷いてこれから来襲する長周期波振動を測得しようと した研究は,わが国では筆者らのグループ以外に見当た らない(山城ら2009,安田ら2010).あびきのような気 象起因の長周期波の発生・発達については大気・海洋の 相互過程の考察が必要であり,十分にその機構が解明さ れていない.本研究は,これまでの現地観測を発展させ, 気圧・水位・流況に関する多点観測体制をとって2010年 1月12日~4月4日までの約3ヶ月にわたる長期観測を実 施し,現地の副振動の特性を解明しようとしたもので ある.

Field Observation of Secondary Undulation "Abiki" in Urauchi Bay, Kami-Koshiki Island