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1. まえがき 酸化チタン(TiO2)の結晶構造はアナターゼ(anatase),ル チル(rutile),ブ ル ッカイ ト(brookite)の三種が知 られて い る。なかでもルチル構造は低温から高温まで安定 であり, 電気的には高誘電率,高 抵抗率を示す。これらの特徴は, 薄膜 コンデ ンサーや湿度センサー,ま たガスセンサー等 にすで に実用化されてい る(1)。さらにTiO2は 紫外線を吸 収することにより電子 ・ホール対を形成 し,そ のホール が炭酸ガスを分解 し炭化水素ガス等に変換する触媒作用 を有するため,最 近ではこの分野へ の応用が大 きく期待 されている(2)-(4)。 今までTiO2の 応用に関する研究はほとんどが粉末試料 を用いたもので,薄 膜試料 を用いた例は非常に少ない。 しか し薄膜試料は電子構造や化学量論性を定量的に制御 できるこ とや,よ り大 きな量子効率 が得 られる(5),(6)など の利点持つためTiO2の特性を利用 したデバイス作製にとっ ては非常に都合がよい。また,サ ブ ミクロン以下のTiO2 薄膜は光の干渉によ り青,紫,金 色などに発色するので 装飾品を中心とした商業ベースでの応用 も考え られる。 このようなデバイスを薄膜で作製す ることを考えた場 合,基 板との密着性がよく,電 気伝導度及びバ ンドギャッ プな どの電気的特性を自由に制御で きることが重要で あ る。また,機 能性薄膜作製においては,プ ラスチックや 紙などの高分 子系を含む種 々の基板上 に低温で成膜する 技術開発が不可欠になる。 最近,イ オ ンビーム法や プラズマ法によりTiO2薄膜を 作製する試みが数多 くな されている(7)-(14)。しかし,こ れ までに作製されたTiO2薄 膜はほとんどが非晶質かアナター ゼ構造で,電 気的特性の良好なルチル構造をもつTiO2薄 膜が得 られていない。わずかに作製 後800°C の高温で熱 処理を施 したもの(15)や,400°C で基板を加熱 しながら成 膜を行な ったもの(16)などでルチル構造を もつTiO2薄膜の 形成が確認されるのみであ る。このように350°C 以下の 低温ではルチル構造のTiO2薄 膜がまだ得 られていない。 我 々は,Ar+イ オ ンア シス ト反応 性 蒸 着(Ion Beam Assisted Reactive Deposition: IBARD)法 を用いて室温でル チル型TIOx膜 の作製を試みた。 この方法は酸素雰囲気 下でTiを基板に蒸着す るの と同時に,Ar+イ オ ンをアシス トイオ ンビームとして用いTiOx薄 膜を作製す るものであ る(17)。このAr+イ オ ンビームがTiとOの 結合を促進させ, 従来の方法 よ りも低温でルチル型のTiO2薄 膜形成が行な えると予想 される。 本研究では,IBARD法 を用 いて室温でTiO2薄 膜の作製 を行ない,作 製 された薄膜の電気的特性評価を行なった。 また,Ar+イ オ ン電流密度への依存性を調べることにより イオン照射効果について も明 らかに した。

Electrical Properties of Rutile-type TiO<sub>x</sub> Thin Films Prepared by Ion Beam Assisted Reactive Deposition Method