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9月10日 に牛海綿状脳症(BSE,い わゆる狂牛病)を 疑う牛が確認されて以来,牛 肉等を食べることによる健 康へのリスク,今 後本病がわが国で流行するリスクにつ いて不安が高まっている.い わゆる 「風評被害」により 牛肉の消費が一部では30~50%減 少している.こ の病 気の潜伏期間からして一口食べてみせることで,安 全だ と国民が信 じるとは思っていないだろうが,騒 ぎを静め るために何でもやって見せ ようというリスクコミュニケ ,牛 肉の消費回復にあまり効を奏 していない. これか ら述べるようにもともとBSEが 人に感染する リスクは人生で遭遇する他のリスクに比べて小さいもの であるが,こ の病気の性質からしてリスクコミュニケー ションの方法 を誤ると大 きなパニックを生む危険性をは らんでいる.英 国政府は国民の不安を抑えるためにBSE は人に感染することはないといい続 け,1996年3月 に 英国政府諮問機関がBSEと 新型クロイツフェル ト・ヤ コブ病(vCJD)と の関連性の可能性を発表 した時に大 きなパニックとなった. BSEとvCJDに ついては,い ずれ も致死的である上, その感染のメカニズム,病 原体の性質,両 疾病の関連性 等,科 学的に解明されていない部分が多 く,こ のため生 じるリスクの不確実性 も国民の不安を増大させている原 因となっている. 本病のわが国での発生に伴 うリスクには家畜衛生上お よび公衆衛生上のリスクがある.家 畜衛生上のリスク は,本 病が今後わが国で飼養されている牛で1頭 の発生 にとどまるか大規模な発生 となるかの可能性である.一 方,公 衆衛生上のリスクはBSEの 病原体に汚染された 牛肉が流通し,vCJDの 患者が出現する可能性である. この2つ のリスクは密接に関連 している.す なわち,わ が国の牛でのリスクが高ければ高いほど,十 分な公衆衛 生上のリスク管理がなされないかぎり,汚 染 された畜産 物が食物連鎖に入 り,そ の結果vCJDの 患者の出現のリ スクが高 くなる.ま た,公 衆衛生上のリスク管理措置 (と畜場での検査,SRMの 除去等)は 汚染 された肉骨粉 の流通の防止に役立ち,ひ いては家畜衛生上のリスクの 低減に役立つ. 本稿においては,ま ず,BSEお よびvCJDの 疫学的特 徴について解説 し,次 に家畜衛生上のリスクおよび公衆 衛生上のリスクについて考察するとともに,今 般わが国 で講じられることとなった一連のリスク低減措置につい て論じ,最 後にリスクコミュニケーションのあり方につ いて提言 したい.

Animal Health and Public Health Risk of Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE)